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国際時計通信『水晶腕時計の興亡』
時計の小話
続・時計の小話

『国際時計通信』
国際時計通信社発行 昭和47年5月15日 第13巻第5号
-水晶腕時計の興亡(1)-

国際時計通信社発行
昭和47年5月15日 第13巻第5号

国際時計通信とはもう廃刊になりましたが、当時国際的に権威のある時計業界紙でした。

CMW創設に尽力された一橋大学名誉教授山口隆二先生と女性編集長日野須磨子氏が興された出版会社です。
国際時計通信 表紙

水晶腕時計の興亡(1)

(1)
近頃の時計業界は水晶腕時計ブームと断言しても決して過言ではないだろう。それを裏付けするように先発メーカーのセイコーを追って内外の有力各メーカーが水晶腕時計を発売開始した。

水晶腕時計は従来の機械腕時計の観念をまったく脱皮した画期的な時計であり、その精度の卓抜さゆえに将来の時計の主流をしめるに間違いない。たしかに水晶腕時計は機械腕時計とは全然比較にならないほど正確な時刻をその時計の所有者に知らせる。

でも日常人間の腕に付ける時計が完璧な正確さで時を知らせたらその所有者は時間に神経過敏となり時にしばられた盲者になりかねない。又それと同時に時計のありがたさを忘れ去ってしまうのではないだろうか?

1年間近くも針を時報に合わせなくてすむ腕時計。それを考えただけでも水晶腕時計コンピューターを持った怪物のように見えて私たち人間に威圧を与えないともかぎらない。

完全に近い時計を腕に付けた人はあまりの完全さに腹立ちが起こり、人間の不完全さゆえにそのような時計を潜在的に破壊したい人間の本質的な衝動にかられるだろう。人間はおそらくこのような正確な時計には愛着を覚えないのではないかと私は思う。時計はある程度狂うからこそ愛らしいのではないだろうか。

1日で10秒とか1週間で1分とか狂うたびに時計の持ち主がリュウズを引っぱって針を合わせる。それは非現代的で面倒なことのように思われるかもしれないが、そこには所有者たる人間と時計との対話があると私は思う。

『この1週間はあまり狂わなかったな』とか、『今週は先週よりもよく狂ったな。あっそうか、今週は過激な運動をしたからだな』と時計の事で1週間の出来事を思いめぐらすのは時計を自分の飼っているペットの犬や鳥の体の調子を心配したりすることとまったく同じで、時計を生命を持った生物と同一視しているからにほかならない。

それは所有者のいる環境や状態に敏感に反応する繊細な神経を持った生物のようにも見えてくるし、所有者と同じ血がかよった機械のようにも見えてくる。

それに反して水晶腕時計に機械腕時計にみられる暖かみがはたして存在するだろうか。人間は地上の生物の中で1秒1秒、死という終着点に向かって生きていると認識している、たったひとつの形而上学的な生物である。そんな人間が1秒1秒正確に動く時計を手にしたら、その時計は刻々と近づく死を知らせる冷酷な機械のように思われてくるのではないだろうか。

水晶腕時計は今のところ一番低額なものでも高価で高嶺の花の感じだが、近き将来には大量生産されて安価になり、いろんな価格の水晶腕時計が時計市場を独占し、機械腕時計の運命を蹴落すことは火を見るより明白だと思われる。

安価になれば腕時計としてこれほどよく合う時計はないのだから珍しさも手伝ってたちまちのうちにもてはやされることになるだろう。しかしながら、その人気は定着しなくて長くは存命しないだろう。なぜなら、あまりの精度ゆえに単純に喜び水晶腕時計を礼賛する人々も出てくるだろうが、一般時計消費者は冷たい科学(電子工学関係も含めて)万能への反動的な感情がうっ積して、いつかは爆発するだろうと私は推測している。

おそらく昔懐かしいチクタクチクタクと呼吸音がこだまする休みなく動きを続ける機械腕時計を見直すのではないかと思う。私には水晶腕時計の使命は人々に機械腕時計の味や、よさを認識させるためのように思われてならない。

多分早くてこの先数年後には水晶腕時計が機械腕時計に取って替わり機械腕時計は、そのよさを熟知している一部の人々にしか愛用されないのではないか。

でもいつかは人々を機械腕時計のよさをはっきり認識して、その頃が何十年後かそれとも百年後か機械腕時計の王座奪回という輝かしい復活を演じるのではないかと信じるのは私だけだろうか。機械腕時計は今や頂上をきわめた状態に置かれているが、その道程は一朝一夕に出来たものではなく何百年という機械腕時計の歴史があってこそ成しとげられたものであり、そこには幾多の優秀な時計研究家の努力の結晶がちりまかれているのである。

世界の各地域の民族の文明は、それが頂点に到達したとき、それを永久に維持できなくて滅亡の跡を辿るのが歴史の定説であるが、私たち時計技術士は機械腕時計の頂点をいつまでもくずすことなく後世の若き技術者に機械腕時計の素晴らしい伝統を伝承しなければならないと思う。

機械腕時計の復活が起こったその時点でメーカーの秀でた設計家や技術家は猛省するだろう。
時計、特に腕時計は精度第一ではなく、それ以前に人間と同じ魂を持つ生物の機械腕時計が一番人々に愛されるのだと。

(2)
現在、時計市場に出回っている腕時計は多彩な顔触れである。大ざっぱに分類してみると機械腕時計、テンプ式電子腕時計、音叉式腕時計、水晶腕時計この四種類に分れる。その中でテンプ式電子腕時計、音叉式腕時計の2つが数年後の時計市場に勝ち残れる魅力はほとんどないのではないかという私の仮定の上で無視した結果前回の話になったわけである。

なぜテンプ式電子腕時計と音叉式腕時計が将来生き残れないのか。この2種類の腕時計は時計購買者に『電池腕時計はわりと便利なものだ』と認識させるために誕生したようなものであり、同じ電池腕時計の仲間である水晶腕時計に遅かれ早かれ引き継がれる運命にあると思われるからだ。

水晶腕時計は将来もっと大量生産され、メーカーのムーブメント簡素化への努力とあいまって平均的サラリーマンの給与額でも比較的楽に購買できる価格にコストダウンされる可能性は大いにある。

その時点で音叉式腕時計やテンプ式電子腕時計は水晶腕時計と太刀打ちできるだけの秀でた特色と魅力を持っているかという疑問であるし、肝心の時計消費者にアピールされてから余りにも期間が少なすぎる。

ブローバでさえ誕生してから約10年間しか過ぎ去っていない。10年たった今でさえもブローバ音叉式腕時計の名は時計購買者の頭の中では影のような意識されるか意識されない不明瞭な状態である。

ということは機械腕時計の歴史とは比肩できない程短いために、それとは問題にならないくらい購買者に確定され安定した地位が築かれていないというわけだ。そのような状態であるテンプ式電子腕時計や音叉式腕時計は、安価になった水晶腕時計と勝負にならないと思われる。水晶腕時計も音叉式腕時計もテンプ式電子腕時計もみな銀電池をエネルギー源にして鼓動するので土壌は一緒だと言える。

ようするに、よほど時計の機械に関心のある時計購買者以外の大多数の時計購買者には、それら三種類の時計は少し違うにしろ電池で駆動する腕時計いとして映るはずである。そうなればテンプ式電子腕時計も音叉式腕時計も個性的な魅力の点で水晶腕時計に劣り、なおかつ購買者にアピールした期間が短いために、それら2つの腕時計と、そう値段の差のない水晶腕時計購買へとお客が指向するのは目に見える。

悪く言えば、音叉式腕時計が10年間かかって作り上げた意義はどこに帰結するか。それはただ電池腕時計の信頼性を大衆に知らせるためにあったのであり、水晶腕時計はなんらのアピールすることなく、容易に信頼性を大衆から得たことである。

水晶腕時計は音叉式腕時計を利用したと言っても過言ではない。音叉式腕時計の10年間の長い下積みなどをすることなく水晶腕時計はいともたやすく話題と人気をさらってしまった。たしかにブローバ社が世界に先がけて音叉式腕時計を商品化に成功し公表発売開始した時は世界の時計産業をどれほど震撼させたかはたやすく想像できるが、現在の水晶腕時計などではなかっただろう。

そのブローバ社が10年間もかかって紳士用と同じ精度の小型化した女性用音叉式腕時計を開発したことはブローバ社が世界に音叉式腕時計を普及しようとする意気込みが見い出せるとともに、これで完璧な音叉式腕時計の開発にピリオドが打たれたことではないか。これを証明するかのように今年になって邦貨に換算してSeiko Quartz38 SQWよりも安価な水晶腕時計を開発し発売したことである。

ブローバ社はおそらく女性用音叉式腕時計の存在する期間を、自社が安価な女性用水晶腕時計の開発するまでと、もくろんでいるに違いない。音叉式腕時計は最近の女性用の出現で一応の技術的頂点に達したであろうが、水晶腕時計はいかに超高精度の紳士用を開発したところで女性用が出現しないかぎりにおいて頂点に到着したとは言えない。

セイコーもブローバもスイスのCEHも紳士用と同程度の精度をもつ小型化された女性用水晶腕時計の開発に全力をあげているに違いないし、もうすでに効果を得て近年に女性用水晶腕時計を発売するかもしれない。そうなれば、世界の各有力メーカーが、いかに価格の面で安くなせられるか、この点でメーカーの技術がしのぎをけずることになるだろう。

音叉式腕時計と同じくらいの価格の水晶腕時計が開発されれば時計購買者は音叉式を買わなくなり、私の音叉式が消え去る説はここに由来する。シチズン社がどれだけセイコーと対立して音叉式を伸ばすかみものであり、おそらくセイコーは安価な水晶腕時計、それでも音叉式の10倍以上の精度をもつ水晶式を開発してシチズンと対立抗争するだろう。

勝敗は後日わかる。

ようするにテンプ式電子腕時計、音叉式腕時計は安価な水晶腕時計が出現するまでの単なる継い手であると言える。世界の時計業界を制圧するメーカーはいかに早く安価な邦貨に換算して3万円前後の水晶腕時計を商品化させるかによって決定されるだろう。その時こそ全世界の人々は10年前のブローバ音叉式の出現の何十倍かの奇異の目でその時計を眺め回すにちがいない。でもそこから水晶腕時計の斜陽化は始まる。

(3)
テンプ式電子腕時計と音叉式腕時計が、超高精度であり、なおかつそれらと比較して同じくらいの値段の安価な水晶腕時計の出現によって徐々に時計市場から影をひそめてゆき、最後にはまったく消え去ってしまう宿命にあると書いた。

それら2種類の水晶腕時計を生みだす蔭の演出の役割を果した腕時計がなくなった時、そこで真の意味での水晶腕時計対、機械腕時計のどちらかを滅ぼすまでの徹底的な抗争がくり広げられよう。

この時の水晶腕時計に敵対する機械腕時計の中には廉価時計ピンレバーウォッチは含まれないと思う。中高精度を有する機械腕時計と比較して問題にならない程安く、それでいて日常生活に支障をきたすほど狂わないピンレバーウォッチは永久的に時計市場に生き残れると確信している。

以前にピンレバーウォッチが日本に初登場した時圧倒的な人気を購買者から勝ち得たけれどもその人気は持続しなかった。そのあまりにも短い命は花の命よりも短命だった。

この原因は、いろいろとあるだろう。

日本人特有の心理である野次馬的根性と珍しいもの喰いが悪影響を及ぼした。またそれに拍車をかけるように日本の時計輸入商社がその人気にのり遅れないようにピンレバーウォッチならどれでもよいからと思って売り出した。日本人の心理を分析もしないで、またピンレバーウォッチのことを研究もしないで売り出したから大変だ。

時計輸入商社はおそらく粗悪な香港製ピンレバーウォッチもスイス製ピンレバーウォッチも同じであろうと計算していたため、優秀なスイス製ピンレバーウォッチを捨てて輸入経路など便利な香港製を売りまくったのだろう。

その結果が今や時計市場からピンレバーウォッチの姿がほとんど虫の息であるのだ。それよりも一番大きな原因は日本人のピンレバーウォッチに対する認識の浅さのためであったろうと思われる。昔から国産メーカーであるセイコー、シチズン、オリエント、リコー等が国産のピンレバーウォッチを生産発売していたら悪くころんでも今の状態にはならなかったはずである。

なぜなら以前から国産メーカーが国内時計市場でピンレバーウォッチを販売していたら少なくとも日本の時計購買者は、その時計は日差2〜3分で2〜3年持てばダメになる機械であり使用方法もT・P・Oに合せた第二第三の時計として需要があったはずである。

まったくピンレバーウォッチの土台が固まっていない日本でスイス製廉価時計、もしくは使い捨て腕時計と派手に宣伝をした結果、日本人の今までの時計の概念としてあったスイス製は時間のよく合う時計という考えが悪い作用をした。

日本人はおそらくピンレバーウォッチを従来のスイス製腕時計と同程度に時間がよく合うのだと潜在的に盲信もし期待もしていたのではなかろうか。そう期待していたためであろう、各時計店、デパートで時計売場に2〜3分の時間調整をしてくれという苦情が飛び込んだ。すると時計店のデパート時計売場の販売員はお客にそれ位狂うのは当り前で普通です、と言う冷たい説明をした。

そう言われても日本人、特に今までわりと精度のある時計を所持してきた国民にとって、また素人の時計消費者には宝石入りクラブツースレバーウォッチとピンレバーウォッチの区別がつくはずもない。

元来腕時計を消耗品と見なさなかった日本人はたとえそのピンレバーウォッチが安かったところで高級スイス製腕時計の使用法と錯覚してしまったのではないだろうか。いくら現代が物質文明の渦中の使い捨て時代であろうとピンレバーウォッチを使い捨てにはできなかった。

何にもましてピンレバーウォッチがスイス製であるが故に2〜3分狂うのは現実として認める事ができず、しだいにピンレバーウォッチを敬遠し見切りをつけていったのであろうと思われる。しかし現在では輸入時計商社もその原因について深く究明しようと心がけており、優秀なスイス製ピンレバーウォッチで巻き直しをはかっている模様だ。

ようするに国産メーカーがピンレバーウォッチを手がけていない以上、時計はよく合うという考えが日本人の頭の中にあるからピンレバーウォッチでも、もう少し時間がよく合い、アフターサービス関係もタイメックス並にしたら日本時計市場にもう一度ピンレバーウォッチがお客に愛用される機会があると信じる。

そうなればピンレバーウォッチを水晶腕時計が時計市場から追い出す事は不可能なことである。それはピンレバーウォッチが水晶腕時計の価格と照らし合わしてあまりにも安いからである。

よって水晶腕時計がいくら安価になろうともその限度はある程度決まっているのでピンレバーウォッチを負かすことはできない。ピンレバーウォッチの需要は永久になくなるものではなく、危ないのは中高精度を持つ機械式腕時計が一身に水晶腕時計の挑戦を受けることになるのだ。

→水晶腕時計の興亡(2)へつづく(3回連載)
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