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国際時計通信『水晶腕時計の興亡』
時計の小話
続・時計の小話
121話〜140話

●時計の小話 第121話(遠方より突然ご来店のお客様)●

今月4日、東京A区のI様が石川県松任市の弊店まで、修理依頼品を持って車にてわざわざご来店されました。
行き帰り15時間の長距離ドライブです。
往復1,200km以上あるのではないでしょうか。
さぞお疲れになられたことと思います。
インターネットのお陰で沢山の時計好きの方々にお目にかかれて、こんなに嬉しいことはありません(神戸の方がお二人、福井の方お二人や、富山の方、新潟の方、能登の方がご来店されました)。

先月26日にセイコー5アクタスとセイコードレスウォッチ(HP掲載)の修理を したのですが、今回は一度に12個の腕時計の修理依頼のためにご来店いただきました(宅急便にて一度に12個送るのは不安だとおっしゃっておられました。30年間この業界にいて、一度に12個の修理依頼を受けるのは初めての体験です。世の中には本当に時計の好きな方がおられるのだなと実感いたしました)。

その中にはお祖父様やお父様の思い出のご愛用の時計が含まれておりました。
下記にその内訳を書いてみます。

1.ブローバー アンティーク手巻き
Cal.7AK-47 21石 ブレゲ巻き上げヒゲのムーブメント ブローバ社がアメリカ在籍の頃の稀少な品

2.ホイヤー プロフェッショナル1000
Cal.ETA社2872 17石 オートマチック

3.RADO CORNELL
Cal.A・S(ア・シールド)1858 25石 オートマチック(ETA社でないムーブに注目)

4.LE MONDE
Cal.ETA社2824-2 17石 オートマチック 裏スケルトン仕様

5.JEAN MARCEL
Cal.ETA社2892-2 21石 オートマチック 裏スケルトン仕様(OMEGAシーマスターと同ムーブ)

6.シチズン・オートデーター・マンスリー
19石 月・曜日・日表示(スーパージェット自動巻と同Cal) 昭和30年後半の品

7.Jean Chabot
21石 オートマ Cal、ミヨタ8200A 裏スケルトン仕様

8.セイコー5デイデイト
17石オートマ Cal,7009A 逆輸入品(クロノメータークラスの精度が調整後出ました)

9.Santo Joannes
17石手巻き 両面スケルトン Cal、不明

10.ホイヤー スーパー プロフェッショナル オートマ
Cal、ETA社

11.アンティーク懐中時計 R・Schmid
7石(地板に馬上の騎士マーク) ホールマークは獅子 約数十年前の物

12.アンティーク懐中時計 メーカー名不明
7石(多分No、11と同メーカー) 数十年前の物

以上の12個でした。
懐中時計2個は骨董品でかなりくたびれていますが、何とか動くようにしてみるつもりです。

●時計の小話 第122話(SSケースについて)●

ステンレス・スティールSSは一般に錆びない鋼材と言われています。
錆びない不チュウ鋼と言われるだけあって利用範囲が広く、キッチンや浴槽、玄関に沢山使われています。

時計ケースにもSSはK18金無垢とともに現在では代表的なものです(昔は・・・30〜40年前・・・素材が真鍮のクロームメッキが多かったです。4〜5年でメッキが剥がれサビが生じ緑青が噴いたりした物です)。

SSはサビに強いために加工しにくいですが、ケースに採用され使われてきた物と思います。
しかしながら何十年と使用してきますと、長年の汗・垢・汚れの蓄積により、SSと言えども必ずやサビが生じるものです。

堅牢さ丈夫さではNo1のROLEXオイスターケースも、使用者の手入れが悪いと裏蓋のねじ込みケースの所からサビが生じます。
そうなれば防水機能は著しく低下し、日常生活防水程度以下になってしまいます。
汗をよくかいた夏の時期の終わりには、ケースとバンドを柔らかい猪の歯ブラシで全体を洗って、汗(塩分)や汚れを取ってみるとイイと思います。

2〜30年使用されたROLEXの修理依頼の品を見ると、ケースの裏蓋ねじ込み部分が錆びているのによく当たります。
高級時計は一生物、愛情持って大切に使いたいものです。

時計の小話 第123話(シチズン電子腕時計について)

電子腕時計のパイオニアと言えばシチズンと言えるでしょう。

1966年3月にエックスエイト・クロノメーター(天府式・メカ式と殆ど同機構)を売りだしたとき、1年間正確に動くムーブに驚愕しました。
ゼンマイ式のように解けていく道程でのトルク変動がないために、歩度は極めて安定して正確でした。

1969年には普及版のコスモトロンを売りだし(当時の価格で2万円前後)、1970年にはICー70を開発し、1971年7月には日本で初めての 女性用電子ウォッチ・コスモトロンLを売り出しました。

1972年5月には電子ウォッチの決定版コスモトロン・スペシャル(Cal、7801A 8J 10振動のハイ・ビート)を売り出しました(電池製造技術の目覚ましい発展により電池寿命が2年に伸びたことは、この時計をさらに魅力のある商品にグレードアップさせました)。
この時計は電子ウォッチの名機で、音叉腕時計に匹敵する精度を備えておりました(読者の方でこの名機を所有しておられる方もいると思います。ちょっと羨ましいですが)。
時報合わせ装置(ジャスト・セッティング)を搭載してあり、8時方向にあるボタンを押せば、正時に対してプラマ3分以内の誤差は一瞬にして修正されました。
1〜2ヶ月に1度だけ押せばいいと言うほど便利で正確な時計でした。

ブローバと提携し、1971年9月に音叉腕時計ハイソニックを売り出しました。

セイコー舎に遅れること4年、1973年8月には今ではとても珍しい天府式レゾナントモーターの水晶腕時計を開発売り出しました。
1秒間に1回動くステップモーターのような味も素っ気もない機構と違って、クォーツでありながらメカ式のように動くテンプに、面白さを感じました(スケルトン仕様にしたら、時計愛好家このクォーツ・テンプ式腕時計は今でもかなり売れたのではないでしょうか?)
しかしステップモーター式よりも調整がかなり難しくて、神奈川県藤沢市の シチズン技術センターの5日間の技術講座を修了しなければ修理不可能な厄介さがありました(これを修理できる人は日本ではかなり少ないのではないでしょうか?)。

その一方、ステップモーター式のセイコーのクォーツ技術講座は2日間で修了し、参加者は日本全国に一杯いました。
昔はクォーツ技術講座を受講していない店では修理できませんでした(部品の供給がありませんでした)。
講座修了証書を店内に威張って飾っていたものです。

現在ではクォーツは全てと言っていいほどステップモーター式を採用しております。
部品数が少なくて組立が簡単で故障がなくて製造コストが極めて安いという、良いことずくめのステップモーター式です。

時計の小話 第124話(シチズンの名作・薄型自動巻について)

かってグランドセイコーに対抗してグロリアス・シチズンがあったように、セイコー・ロードマチックに対抗してシチズン・アドレックスがありました。
このアドレックスはシチズンの名作の薄型自動巻腕時計です。
アンティーク・ショップにもこの時計の在庫をお持ちの店は殆どないのではないでしょうか?(もう無いと言っても過言ではないと思います。 それほど今では滅多にお目にかかれない貴重な腕時計と思います)。
セイコーLMは有名でも、このアドレックスを知っておられるマニアの方は少ないと思いますので詳しく述べてみたいと思います。

今から約28年前に開発売り出されました。
直径26,6mmで厚さ3,73mm(100円玉2枚の厚さ)の薄型にもかかわらず、自動巻デイデイト機能付き(カレンダー瞬間送り・ROLEXと同じ)でした。

Cal、8001Aで28800振動(8ビート・ROLEXと同じ)で 、ROLEXのようにアンクル受けとテンプ受けをブリッジ化していました。
かなりROLEXを意識して作られた見事な腕時計でした。

高級腕時計と同様にヒゲ棒の当たりをヒゲ両アタリ化しておりました。
価格の割?(当時の価格で7万円前後・高級機種に入る時計でしょうか?ケースに沢山のお金を注ぎ込んでいました)にはいとも簡単に高精度が出るムーブメントでした。

自動巻機構はシチズン独自開発のUアンドU方式(片巻式自動巻)を採用しておりました。

このアドレックスには、ケース・文字板に、かってなかった斬新な素材を取り入れていました。
初めて見たときはあまりの美しさに宝石を見るような感じのモノでした。
十勝石・黄虎目石(イエロータイガーアイ)・血石(ブラッドストーン)・ジュモンドを、ケース・文字板に採用していました。
進取の気性のシチズンらしい腕時計でしたが、想像を絶する美しい奇抜さ故に余り売れなかった記憶があります。
ムーブメントを生かした、もっと薄型のドレスウォッチを作ったら売れたものと残念に思っております。

セイコー・オリエントもメカ式腕時計を再生産している今日、セイコー社に負けない素晴らしいメカ式腕時計を過去において生産してきたシチズン社も時計ファンの要望に応えて、メカ式高級腕時計を再生産すべき段階に来ているのではないでしょうか。

●時計の小話 第125話(シチズンの名作・女性用小型自動巻について)●

シチズンの女性用自動巻腕時計(デイデイト付き)と言えば、すぐ思い出されるのがシチズン・コスモスターFでしょう。
これも今から28年程前に開発された、シチズンの記念すべき女性用の名作と言える ムーブメントです。

直径は17,6mm厚さ4,50mmで、和英切り換えのデイデイト機能付きでした。
部品数も少なく非常にコンパクトに作られていました。

Cal、7000で21石、28800振動で、テンプ、アンクル受けは高級時計用のブリッジ方式を採用してあり、安定した歩度を保証しておりました。

自動巻機構は片巻き方式で、スイス・エボーシュのA・S(ア・シールド社)も この方式を長く採用していました(最近修理した東京のIさんのラドーもA・S製の片巻き方式の自動巻でした。ROLEX・ETA社・SEIKO各キャリバーは両巻き方式が多いですが、一般的に片巻き方式の方が動きの軽い小さい運動の時によく巻けると言われています。ETA社クロノグラフの名機Cal、7750は片巻き方式です。両巻き方式は動きの強い時によく巻かれると言われています。片巻き方式の方が部品数が少なくて済み、薄く作れるというメリットがあります)。

シチズン・コスモスターFと共に有名な女性用腕時計に、コスモスターV2(Cal、6601)がありました。
若干、シチズン・コスモスターFよりも機械が大きかった為に、若い女性や入進学用の防水腕時計としてよく売れ、一世を風靡しました。
価格は当時で20000円前後いたしました(今の貨幣価値で言うと8万円位でしょうか?今から思えば中級品でも腕時計はかなり他の物価と比較して高かったように思います。現在では5000円も出せばそこそこ時間の合うクォーツが買えますものね)。

一方、セイコー舎はジョイフル(自動巻デイデイト)、コーラス(手巻き)等があり、とても人気がありました。
デザイン面では若人にはシチズン、大人の女性にはセイコーが人気があったような 記憶があります。

そう言えばオリエントには現在、女性用メカ式(自動巻Cal、55742 21石)腕時計がありますが、男性用メカ式を再生産し出したセイコー舎にはまだ女性用を再生産していませんね。
将来的にはセイコー舎は女性用メカ式を出す予定なのでしょうか?

時計の小話 第126話(シチズンの歴史に残る名作達)

アンチ巨人ファンがいるように、アンチ精工舎のシチズンの熱烈な支持者が世の中には一杯おられると思います。
シチズン・ファンの方々には堪えられない、痺れるような待ちに待ったお話をしたいと思います。

シチズン(尚工舎時代)は、1924年に第1号の純国産の懐中時計を作りました。
この時計は余りの見事さ故に、時の天皇陛下にも愛用されるという名誉を受けました。

腕時計では5振動(ロービート)が当たり前の時代に、1951年初めて女性用6振動の腕時計を製作しました。
過去に於いて南京虫と言われているシチズン小型腕時計がそうです(短径16,0mm 長径19,0mm 厚さ3,6mm)。

目覚まし機能が付いたセイコービジネスベルが1967年に売り出されるよりももっと早く、1958年にシチズンアラーム腕時計が世に出ました。
腕時計が貴重で珍しい時代に、このような腕時計を作ったシチズン技術陣の進取の気性に驚かされます。

国鉄の車掌さんの標準時計として19セイコーと共に採用されたシチズン・ホーマーは1960年に生まれました。
この手巻きの腕時計は安価のわりには高精度が出るために、時計修理技能士試験の教材にもなりました。
今でも時折修理依頼が来ますが、いとも簡単に高精度が出ます(大型テンプの為でしょう。そう言えば初期のグランド・セイコーも大型テンプを採用していました。現在では駆動持続時間を長くするために、どちらかと言えばテンプは一般的に小型化していると思います)。
このホーマーはシチズンを大きく飛躍させた貢献度大の腕時計と言えるでしょう。
この時計はインド・アメリカへ輸出され人気を博しました。

セイコーにダイヤショック(耐震装置)があるように、シチズンにはパラショックが1956年生み出されました。
穴石にも渦巻き状の耐震バネが付いているために、ヘリコプターから落下させても天真は折れないという驚異的な代物でした(私見ですが、パラショックの方がダイヤショックよりも耐震性に関しては上をいくものと 思っております)。

1958年にシチズンは初めてシチズン・オートと言う自動巻腕時計を作りました。

本格的には1961年にシチズン・ジェットと言う製品を生み出しました(この機械は個人的には余り好きなムーブではありません)。

セイコーにゴールドフェザー(1960年製造 厚さ2,90mm)があるように、シチズンにもダイヤモンドフレークと言う薄型腕時計がありました。
1962年に売り出され、厚さ2,70mmで25石で当時の価格で11000円しました。

シチズン社はいつもセイコー舎を意識してそれに対抗する腕時計を作ってまいりました。

同じ1962年にはシチズン手巻き腕時計では最高峰の、シチズン・クロノメーター31石が世に問われました。
外径30,4mm 厚さ4,5mm 大型テンプ13,5mmを採用した、超高精度が出る美しい素晴らしい腕時計でした(セイコー舎のCal、45に匹敵する私の憧れの腕時計です)。
生産個数が極めて少ないために、シチズンの幻の名機と言われております。
読者の方でお持ちの人がおられましたら、是非適価でお分け願いたいと思っております。

普及版の最高傑作、シチズン・クリスタル7は1965年に登場しました。
防水・自動巻・デイデイト機能付きでありながら、厚さ4,48mmという薄さでした。
セイコー5と共に国産時計産業史に残る大衆版の名機と言えるでしょう。
読者の方にも今でも所有しておられる方が沢山いらっしゃることでしょう。

このように述べてきますと、如何にセイコーとシチズンが良きライバルであったか解っていただけると思います。
両社がお互いに切磋琢磨し競争したからこそ、日本の時計産業がスイスに負けないほど優秀だと世界に認められるものになったのでしょう。

●時計の小話 第127話(高級スイス腕時計の価格について)●

総合病院に設置されているCTスキャナーのような高額医療機器は、高いモノになると定価は数千万円もします。
ある知人の医療機器納入業者から聞いたところによりますと、工場出荷価格は一般的に定価の2割〜高くても3割だということらしいのです。
病院等には半額で納品しても十分、利益は確保されているというのです(メーカーによっては千差万別でしょうが)。

一方、超高級時計の方はどうなのでしょうか?
時計専門誌等を見ると、最近頓にスイス高級時計メーカーが競って複雑時計(トゥールビヨンなど)を売り出しています。
買う人がおられるから作るのでしょうが、高いモノになると定価は日本では1000万円はします。
買う人を見つけて輸入代理店に現金で交渉して仕入れれば、六掛けから半額ぐらいには仕入れできるのでしょうか?
輸入代理店が卸価格の40%利益を取るとして、日本には上代1000万円の品が300万円以下で日本に入ってくるのではないでしょうか?(断っておきますが、これはあくまで私の推量ですが)。
スイス時計メーカーが30%利益を確保するとして、やっぱり高級スイス腕時計も本当の工場出荷原価は200万円位になってしまうのかも知れません。
そう思うとなかなか超高級時計は一般庶民には手が出せなくて手の届かない商品ですね。

汎用クロノグラフムーブメントETA社7750を例に見てみましょう。
このムーブは、ありとあらゆるスイス高級時計メーカーに採用されています。
この機械を搭載している腕時計の小売価格はどうなっているのでしょうか?

・ブライトリング クロノマットMOP  460,000円

・タグホイヤー プロフェショナル  250,000円

・ボーム・メルシエ ケープランドSクロノ 320,000円

・パネライ ルミノールマリーナ 450,000円(7750−P1)

・オリスTT1・クロノ 175,000円

・IWCメカニカル・フリーガー・クロノ 545,000円

・OMEGAシーマスタークロノグラフ 430,000円

・ポルシェチタンクロノグラフ 425,000円

・Sinn モデル6000 480,000円(7750改良型)等々

仕上げ(クロノメーター規格を取得したり、地板にコート・ド・ジュネーブ模様を付けたり)が各メーカーとも違っているとは言え、機械が同じで余りにも価格にばらつきがあるのに ビックリされたでしょうか?(それにしても名機のETA7750がリーズナブルな価格で仕入れ出来るので、スイスの他の時計メーカーが莫大な資金を投資してムーブを自社開発しないのがよくわかります)。

プログレス社のトゥールビヨン・ムーブは3000SFR(邦貨で24万円)と聞いております。
このトゥールビヨン・ムーブを搭載したスイス時計メーカーは、クロノスイス・アイクポッド・シルベスタイン等でしたが、小売価格はどれも百数十万円以上もします。

リーズナブルな価格で人気沸騰のノモス(小売り価格十万円前後)に搭載されているETA社Cal、7001などは果たして幾らで買える物なのでしょうか?
値段を聞いたらおそらくビックリするに違い有りません。

それにしてもETA社は良いムーブメントを低コストで製造できる生産能力に、他のスイス時計メーカーは太刀打ちできないのが現実でしょう。
それ故に、ETA社ムーブのスイスでの寡占状態が生まれたものと思います。

『編集後記』
フランク・ミュラーと言えば、ブレゲ再来の天才的時計師として今日、高く評価されています。
複雑時計(コンプリケーション)を得意として、新機能の腕時計を矢継ぎ早に世に問うてきました。
私も田舎の一塊の時計師として、一度フランク・ミュラーの機械を見てみたいものとかねがね思ってまいりました。
ケース・文字板・ムーブメントとあらゆるパーツを自社工房で製作すると聞き及んできました。

ごく最近、フランク・ミュラークロノグラフ(品番7000CC 定価88万円)のムーブを見る機会がありました。
機械はETA社クロノグラフ7750系を採用しているではありませんか。
ビックリしました(自動巻ローターの素材を比重の高いプラチナ950を使っていましたが)。
如何にETA7750がクロノの汎用機械とは言え、OMEGA・ブライトリング・パネライ・IWC・タグホイヤーオリス・モーリスラクロア等数え切れない程に使用されていることを知るにつけ、余りにも個性が無いような気がして成りません(仕上げに差異があるとは言え、同じムーブを採用しているのに何故こんなに日本で価格差があるのでしょうか?)。

時計の小話 第128話(ロレックスの珠玉のムーブメント達)

昔から変わらず現代まで素晴らしいムーブメントを作り続けた希有な存在の時計会社がロレックス社です。
世界中の時計ファンから圧倒的な支持を獲得してきた大きな原因の一つが、時代時代に於いて一分の隙のない機械をたゆまず作ってきたからなのです。
アンチ・ロレックスの人も、これは認めざるを得ない事実なのです。

『ロレックス』と言えば時計ブランドとして知名度は絶大なものですが、私から言わせれば、中に内蔵している素晴らしい機械を作ってきた『ムーブメント』メーカーとしてのブランドとしてこれからも有名であって欲しいと思っております。

マスコミの寵児になっている、あるアンティーク・ショップのオーナーが「昔のアンティーク腕時計の方が現行の機械より採算を度外視して作ってあり、耐久性・精密度も上を行くものだ。」と言っておりますが、 これはアンティーク腕時計を売るための虚言・方便であり、事実はそうではありません(確かに一部ではアンティーク腕時計に優れた物がありますが。利潤を追求するのが企業であり、採算を度外視して作った時計などは、この世には存在しないのです。そういうことをしていたらその企業は存続していけなくなるでしょう。一部に趣味的に作ってきた小時計企業もかってはあったかもしれませんが)。
そうではなくて、ロレックス社の機械は絶えず進化してきたのです。
私の見る限り、現行のロレックスのムーブメントはどれもが現時点では最高峰の出来映えなのです(今後も更に少しずつ改良を加えながら進歩していくに違い有りません)。

ここでロレックスの機械の栄光の歴史を追ってみましょう。

<メンズ用自動巻キャリバー>
・Cal、A260 A296・・・1940年代(セミバブルバック)

・Cal、1030・・・1950年代(完全な両方向巻き上げ自動巻機構)

・Cal、1520・・・1960年代〜80年(19800振動に進化)

・Cal、1530・・・1960年代前後(サブマリーナー等に多く搭載)

・Cal、1560・・・1960年代(それまでの緩急針調整からマイクロステラ方式に転換。微調整作業が簡略化)

・Cal、1570・・・1970年代〜80年(スポーツモデルに搭載されたロングラン・ムーブ。26石)

・Cal、3000・・・1990年代(片持テンプ受け。28800振動に進化。現行品は殆どが28800振動を採用)

・Cal、3035・・・3000番のデイト機能付き

・Cal、3130・・・現行(テンプ受けがツーブリッジ方式)

・Cal、3135・・・現行(現時点では最高傑作。31石。1030、1520よりも数段進歩しています)

・Cal、3085・・・1980年代(3000番のGMT・デイト機能付き)

・Cal、3185・・・1983年〜現行(テンプ受けがツーブリッジ方式に変更。31石 )


<レディス自動巻キャリバー>
・Cal、1120・・・直径20mmのオートマ、19800振動

・Cal、1160・・・直径20mmのオートマ、19800振動

・Cal、2130、2135・・・現行(28800振動。29石)

<手巻きキャリバー>
・Cal、1130・・・19800振動、直径20,00mm

・Cal、1166・・・19800振動、直径20,00mm

・Cal、1210・・・18000振動、直径23,80mm

・Cal、1225・・・中3針、18石、18000振動、直径23,80mm

・Cal、1600、1601・・・直径20,80mm、2針、19800振動

・Cal、2316・・・ロレックスとしては手巻きでは最高傑作か

<クロノグラフ・キャリバー>手巻き
・Cal、72B・・・1960年代(ベースはバルジュー72。18000振動。17石)

・Cal、722−1・・・1960年代(ベースはバルジュー72。18000振動。17石。ヒゲがテンプにからむのを防止するプレートを採用)

・Cal、727・・・1960年代〜87年(21600振動。20年間使用された安定したムーブ)

<クロノグラフ・キャリバー>自動巻
・Cal、4030・・・1988年〜2000年(ベースはゼニス・エルプリメロ400。28800振動。31石)

・Cal、4130・・・2000年〜現在(パワーリザーブは52〜72時間に延びる。完全自社開発キャリバー。4030とどちらが優秀か評価するには、後10年の時間が必要でしょう)

読者の方が所有しておられるROLEXがどのキャリバーを搭載しているのか知っているのも イイかも知れません。
これからも改良に改良を重ねて、益々ROLEXは止まることのない進化を続けるものと確信いたします。

●時計の小話 第129話(以前の時計店店頭の風景)●

私がこの業界に入った頃の30年程前、腕時計の精度(中級品)は日差プラマ60秒前後は当たり前の時代でした。

来店するお客様の中に、年間数人ほどちょっと変わった方?がおられました。
私の父がしている腕時計を分けて欲しいという依頼です。
訳を聞くと「時計屋の親爺さんがしているからには、さも時間がよくあう腕時計だろうと思う。」と言う事なのです。
そういうお客様が来るたびに、私の父は今自分がしている使用済みの腕時計を適価で売っていました。
その為に父は年間数回新品の腕時計をおろしていました(よって父の愛用の腕時計は絶えず換わっていたのです。新品の中にも出来不出来の物があり、いつも自分の束の間の愛用する腕時計の時間調整を父はよくしておりました。そう言っている私も父ほどではないですが、自分のしている腕時計を数回、お客様の要望により手放した体験があります)。

クォーツ腕時計時代になった今日では考えられないことですが、昔は腕時計の下取りが当たり前でした。
三分の一以上のお客様が、今自分のしている腕時計を下取りに出して、新調のさらに良い腕時計を買い求めていました(現在の自動車の中古車市場とよく似ています。ちょっとずつ高い車に乗り換えるように)。
そういう商取引が毎日ありましたので、どの時計店にも下取りした中古品が50個〜100個ぐらいあったものと思います。
下取りしても中古品の需要はいっぱいあったのです。
腕時計が所得に比例してまだまだ高価であった為に、新品が買えないお客様が中古品をお買い求めておられました(結局は売れ残っていった品も沢山ありましたが。売れ残っていった品がアンティークとして再び日の目を見るとは誰が想像できたでしょうか?)

セイコー舎やシチズンがメカ時計の生産を止めてから数年経った頃でしょうか、私の店にもアンティーク腕時計の在庫がありますかという来店客や問い合わせの電話が頻繁にかかるようになりました。
アンティークと言ったら語感はイイのですが、所詮中古品ではないかと私は軽く見ていました。
アンティーク・ショップ経営者に扇動された一部のマニアだけの嗜好品で、そのうちこの流行も消え去る運命だと決めつけておりました。

そうこうするうちアンティーク(中古腕時計)の修理依頼が舞い込むようになり、OH後、タイムグラファー(歩度検定器)で歩度調整し、腕にはめて5日間程、実測するために実際に付けてみますと、何とも言えないイイ味がするのです。
今まで馬鹿にしていたアンティーク(中古腕時計)がいとおしいような、過保護にしてやりたいような、不思議な感情が芽生えてくるのです。
長く生き延びてきた機械を温かい目でいたわってあげたいような気持ちなのです(たった5日間腕につける時間だけなのですが。所有している人はさぞかし愛着が生まれるものと思います)。
アンティーク(中古腕時計)に魅了された人々の気持ちは、あー、これなんだなと思うようになりました。
かって見ず知らない他人がはめていても何らそんなことは関係ない、新品にはない、それを超越した本当にイイ味(懐古調趣味)があるものだと痛感したのでした。

今では、私はアンティーク(中古腕時計)が新品腕時計と同様に大変好きになりました。
でも日本のアンティーク(中古腕時計)の市場価格はまだまだ高値ですね。
ちょっと手が出せません。
次回はアンティーク(中古腕時計)を安く入手する方法を書いてみたいと思います。

●時計の小話 第130話(如何にしてアンティークを安く買うかその方法)●

アンティーク・ウォッチを手に入れるには、個人売買するか、アンティーク(中古品)・ショップmあるいは質屋で購入するか、オークションで入札して落札するかのどれかでしょう。

オークションには、ヤフー、アンティコルム、クリスティーズ、ドクタークロット、ヘンリーズ、ebey等があります。
そういった中で一番安く買えるのがebey(http://pages.ebay.com/catindex/catwatches.html)でしょうか。
私はebeyの存在を時計技術講座生のMさんから聞きました。

Mさんはごく最近、ebeyからインターナショナル手巻き腕時計(Cal、83)SSケースを50000円前後で、ミネルバK18金無垢ケース(中3針)手巻き腕時計を 40000円前後で買われました(雑誌によく取り上げている、あるアンティーク(中古品)・ショップでは同じようなインターナショナル手巻き腕時計(Cal、89)SSケースを23万円で売っておりました。如何に高いか一目瞭然ですね)

また、最近修理依頼を受けたKさんは、チソットK14金側(Cal、27.2 16石)3針手巻き腕時計、同じくチソットK14金側(Cal、27Bー21  16石)中3針手巻き腕時計、それぞれを175$(邦貨で23000円)で買われました。

これらの4本はどれもが非常にイイ味を持ったアンティーク・ウォッチでした(4本とも弊店にてOHしましたので、修理実績のページに載っていますので一度ご覧下さい)。

私もMさん、Kさんに刺激・触発され、年末、ebeyからアンティーク・ウォッチのチソット(K18金側)手巻き腕時計を2本を購入する手配を致しました。
価格は2本で392$(邦貨で50000円)という、とてつもない安さでした。
まだ購入先のベルギーの人から荷物は届いていませんが、届いたら皆様にご披露したいと 思います。

今年になってアメリカの方から30年前のゼニス・オートマのデッドストック(美麗未使用品)を275$(手数料込みで邦貨約39000円)で購入しました(あるアンティーク・ショップでは4〜50年前のゼニス手巻きSSケースを36万円で売っています)。
これは1月7日に申し込んで、商品は1月18日に受け取りました(後日OH後披露します。支払方法はいろいろあるのですが、クレジットカードは少し心配だったので銀行振込(電信)と国際郵便為替にしました。銀行振込は早いように思いましたが、12月28日手配したにもかかわらずベルギーの銀行に入金されたのが1月18日という遅さでした。手数料も銀行振込は6,500円かかりますが、郵便為替は早いにもかかわらず1700円という安さでした。ご参考までに)。

それにしても日本のアンティーク・ショップの価格は、私見ですがとても高いと思います。
アンティーク・ウォッチ・ファンの方は、一度ebayにアクセスしてみては如何でしょうか。

Mさんも言っておられましたが、一部の高級腕時計(パティック・バセロン・オーディマ・ピアジェ・ロレックス等)を除いて、アンティーク・ウォッチを買うなら10万円以内というのが限度というのが理想でしょうか?
焦らず、慌てず、ゆっくり捜せばきっとイイ買い物が出来ると思います。

●時計の小話 第131話(時計材料店について)●

弊店では部品入手不可能なアンティーク・ウォッチの修理依頼の場合、天真・巻真入れ替えのケースは時計旋盤で自店で別作します。
時計旋盤等で別作できない部品交換の時は、時計材料店に在庫があるかメーカーから取り寄せが出来るか問い合わせます。
スイス時計メーカーによっては時計小売店にも時計材料店にも卸さない輸入代理店の会社もあり、いろいろ大変な目に遭う時があります。

弊店の取引先であるS時計材料店は店主がCMW公認高級時計師で、どんな厄介な部品入手も殆ど上手くやってくれてとても助かっております。
S時計材料店当店担当のK女史は修理は出来ないのですが本当に時計に詳しくて、当店にとって欠かせない大きな存在です(このような時計材料店がだんだん少なくなっていくのが本当に寂しい気がします)。

時計店の親爺さん達が時計修理技術の腕前を競った今から20〜30年程前は、各県に1〜2軒の時計材料店が必ずありました。
当時は工具マニアの時計屋さんも沢山おられまして、新作工具を買われては店に自慢しに見せに来られました。

精工舎の新キャリバーの技術講習会にはベルジョン・ボーレー・GEM(ジェム、ムラキ製)・アロー(松田光)・明光舎・トップオカモト等の工具メーカーが展示即売会を開いていました。
講習会が終わったら人だかりで、我や先で買い求める風景が当然の如くでした(その頃、時計屋は皆さん時計技術習得にすごく熱心だったのです)。
30年前、父から3万円の給料を貰っていましたが、その殆どは工具代に消えていきました。

その頃買ったスイスDUMONT製ピンセット数本は、今でも大切に愛用している工具です(当時でも3000円前後した高級機種のピンセットでした。今では1万円以上 するのかなー)。
一番高い買い物はジャッコツールという天真ホゾ研磨機で、30年前でも確か90000円以上しました。
今買えば数十万するのかな? (高価なわりには利用頻度が少なくて後々大変後悔しました。当時の人口4万人の長浜市にはスイス高級時計の修理依頼が少なくて利用価値がほとんどありませんでした)

最近こんな事がありました。
タグホイヤー(オートマ)の修理依頼を受けたのですが、リューズのネジが摩耗して、ケースのリューズ受けにロック出来ない状態で、リューズ交換のためにS材料店に注文を出しました。
ところが代理店であるL・・ウォッチ・ジュエリー・ジャパンが、リューズのみを時計材料店や小売り店に売ってくれないのです。
やむをえず輸入代理店に時計を送り、リューズを着けて貰ったら、何と下代7560円も取られてしまいました。
たかだか上代3000円前後のパーツが倍以上かかってしまうなんてちょっと言葉を失いました。
時計店の技術をないがしろにしているのか、それとも修理部門でも利益を上げたいのか、そのどちらかでしょうが、輸入代理店のこの姿勢には疑問を持たざるをえません。
こういった考えの代理店が多くなってきたことを残念に思います。
ユーザーの方々に出来うるだけサービスを安く供給する理念があるなら、この企業姿勢は早く撤去して欲しいものです。

●時計の小話 第132話(職人の手の速さ)●

OHに所用する時間は腕時計の種類にもよりますが、時計職人の腕の器用さや、作業の几帳面さ、手抜きするかしないかで大きく異なります。
段取りよく、スムーズに仕事を進める器用な時計職人にかかれば、難物修理も普通の腕前の職人よりも早く作業が完了するものです。

私の場合、1級時計技能士の父より手が早いとよく褒められましたが、休日に朝から夜まで修理しっぱなしで、手巻きなら3本、オートマで2本、クロノ及びROLEXなら1日1本のOHが限度です(難物に当たればたとえ手巻きであろうとも1個仕上げるのに2日〜5日間以上かかるときもあります)。

最近買った時計雑誌に下記のような記事が載っていました。
有名百貨店の時計売場の修理下請けをしている時計修理専門会社のことが書いていました。
各百貨店時計売場からその修理専門会社に、年間45000本の修理依頼が舞い込むそうです。
すごい数ですね(電池交換、パッキング交換等の易しい作業は各時計売場で直ぐにするでしょうから、殆どがOHの依頼でしょう)。
そこの修理スタッフは合計20名で(時計技能士1級が1名、2級が19名 平均年齢28)、45000本の修理をするそうです。
その数字が如何に驚異的な事と言えば、260日間働くとして1日一人当たり9本弱修理しないと消化出来ない数なのです。
殆どの修理がROLEXが多いと書いていましたが、1日8本ROLEXのOHをするなんて驚愕的な事なのです。
どのような作業段取りをすれば可能なのか?
一度、修理現場を見てみたいものです(おそらく見せては頂けないでしょうが)。

私のかっての弟子でI君は(近江時計学校卒・在学中に2級時計技能士資格を獲得)1日オートマを1個するのが限界でした(彼は私の影響を受けたせいで、丁寧に手抜きしないで作業にあたっていたからでしょうか。経営的には彼のような職人ばかりでしたら赤字に陥ってしまうでしょうが)。

尊敬するK先生の弟子で私の兄弟子にあたるO先輩(CMW)は腕が極めて良くて手が早い人でした。
1日にOMEGA等のスイス高級腕時計のOHを何本かしておられました(OMEGAよりも精密・精巧であると言われるROLEXを1日8本以上するのはどうみても人間ワザとは思えないものです)。

かってOMEGA・バセロン・チソットの日本輸入代理店であったシイベル時計(株)のサービスセンターには多数の新進気鋭のCMWが在籍しており、最低でも1級時計技能士の資格を持っていないと肩身の狭い思いをしたと言うことを、以前聞きました。
CMW資格者には特別手当が支給され、多くのCMWがスイス研修に行きました。
その頃のシイベル時計(株)のサービスセンターは紛れもなく日本第1級(いや、世界第1級)の時計修理技術陣の集団だったでしょう。
もう、こんな凄腕のサービスセンターは現在の日本には存在しないのではないでしょうか?
寂しい気が致します。

時計の小話 第133話(良心的なスイス時計)

この間の休日に、妻とフラッと近くのショッピングセンターに行きました。
そこの時計売場を何気なく見ていましたら、最近時計雑誌でよく見るフレデリック・コンスタントが多く並んでいるではありませんか(それまでにマガジン読者の方からフレデリック・コンスタントに関していろんな問い合わせが来ておりました)。

機械式で余りにも安い価格なので、どんなムーブが内蔵しているのか以前から興味しんしんでしたので、よく見てみることにしました(販売員の方に迷惑かけないようにしましたが)。

時計マニアのユーザーを意識しているのでしょうか、殆ど裏蓋がシースルーバックでした。
ブレゲ風の薄型自動巻腕時計(SSケース サファイアガラス 定価22000円)のムーブはETA社Cal、2824−2 25石が入っていました。
このムーブは20〜30万円クラスのOMEGA・IWC・ユリスナルダン・タグホイヤー等に搭載されている汎用ETAムーブ2892−2と輪列・調速機・脱進機は同じで、自動巻機構と日の裏機構が若干違うだけの安定した良い機械です。
この機械を入れてサファイアガラスをはめて22000円とは驚くばかりです。

特に懐中時計(SSケース サファイアガラス 定価31000円)の仕上がりは美しくて、ムーブはETA社Cal、6497−1 17石が入っていました。
この機械でOMEGAと同じインカブロック仕様で、地板の美しい仕上げが施され、この価格ではどう考えても安すぎるではありませんか。

私はスイスのこの時計会社と日本輸入代理店の(株)GMインターナショナルに敬意を払いたくなりました。
輸入代理店の意向かどうかハッキリ解りませんが、スイス高級時計の日本価格が余りにも高額であることに、常日頃より疑問を感じていた私はMこんなスイス時計会社が出現したことが大変嬉しかったです。

直ぐに店に帰って(株)GMインターナショナルに電話をして取引を開始したいと申し込みました。
(株)GMインターナショナルの営業マンの対応も素速く、直ぐに店に来られ取引の契約を致しました。

以前に、リーズナブルな価格で人気のあるオリス時計を取り扱いたく、大阪の(株)サン・・・・に電話を入れましたが、弊店の常時割引しているHP(店の営業姿勢)に反発され取引出来ない経過がありました。
その事を思うと(株)GMインターナショナルの営業姿勢には賛同するものです。

これから機械時計の良い入門品として時計ファン方々に買っていただけたらなと思っております。
もう一つ、ロイヤル・アカデミーと言うブランドでスイス製ムーブ(ETA社製)搭載の腕時計も2万円台という非常にお手頃な価格設定がされていました。
この腕時計も裏蓋がシースルーバックでした。
デザインもなかなか良かったです。
この時計の日本輸入代理店は残念ながら解りませんでした。

●時計の小話 第134話(昭和初期の時計店の風景)●

私の父は彦根商業学校を卒業後、彦根市内の親戚の時計店の紹介で、京都府綾部市のH時計店に就職しました(昭和10年の頃の話です)。
そこは地元では大きな時計店で、時計職人が数人おられる規模の店でした(昭和40年代以前は、大きな時計店では時計職人を5人以上抱えている店はけっこう ありました)
そこでみっちり技術を身に付けて、父は時計旋盤も自由に使えるようになり、時計職人として一人前になりました(私が一時、家業を継いたとき、父愛用の錆びたボーレーの旋盤が埃まみれでありました)。

そこで一からの見習いから始まり数年修業して、次男であったため祖父から資金援助をしてもらい長浜市に小さな店を開きました。

その頃はいくら金があったとしても腕時計を仕入れできないので(精工舎の生産量がごくごく限られていました) 時計材料店から時計ケース・文字板を何十個と仕入れて、賑やかしに店頭に並べていました(当然中には機械は入っていませんでした)。
お客さんにはケース・文字板を選んで頂いてから、機械を中に入れる作業をして売っているという状態でした。
時計店でありながら腕時計の在庫は数個位しかないという寂しいものでした(それほど当時は腕時計は貴重品でした。今では隔世の感がありますね。小学生のお子達も1〜3個位持っている時代ですから)。

父の説によると技術の腕も良かった?ので長浜市で評判になり、駅前通りに一軒のそこそこの店を構えるほどになったと言っておりました(現在は弟2人が時計店と眼鏡店を引き継いで経営しています)。

時計店としてやっと軌道に乗り、これからという時に太平洋戦争が勃発しました。
当然父も召集され、千葉県の第?師団に行きました(亡父から聞き漏らしました)。
そこで師団長や将校に父は非常に重宝がられました。
と言うのは上官は殆ど懐中時計を持っており、落としては天真を折って壊していたのです。
そこで父が修理を受け持っていたのです。
その為に師団長に可愛がられ、仲間が支那・満州に出兵していく中、戦時中はずっと 内地にいられたと言っていました。
嫉妬からか直属の上等兵からよく殴られたとも言ってました(後年、殴られた後遺症で晩年、父は極度の難聴になりましたが)。
無事に兵役を終え長浜に戻り、時計店をまた細々とやりだしたのです。

精工舎が順調に生産が復興すると共に、どこの時計店も活気が戻ってきたのです(精工舎は戦争中、軍需協力工場として兵器の生産をしざるを得なかったそうです。その為に時計の生産設備を諏訪市に疎開させたのです。それが今では世界的に有名になったセイコー・エプソンの始まりです。太平洋戦争がなかったら現在のエプソンは存在しなかったでしょう)。

●時計の小話 第135話(ヒゲゼンマイの調整)●

最近、こういう修理が増えました。
1〜2年前に、ある輸入代理店のサービスセンターでOHしたのですが、時計が1日30秒〜50秒狂うという歩度調整の修理依頼です(30万円〜50万円の高級機種で、精度は−3秒〜+15秒以内に収めなくてはなりません)。

中の機械を見てみましたらヒゲゼンマイがうまく修正されていないのです。
ヒゲ棒の中のヒゲが片当たりで、内側ならまだ許せるのですが、外側に強く当たっていたり、ヒゲが一方に偏心して伸縮していたり、ヒゲ持ちの高さが適切でないためにヒゲ全体が皿のようになっていたり、またその逆で、なだらかな丘陵のようになったりしているのです。
また、変にいじったためにヒゲ全体が水平ではなく傾いていたりしているのです。
これでは当然、時間の等時性が無いのは当たり前で、もう少し慎重に丁寧な作業をして欲しいのです(ヒゲゼンマイはヒゲ棒の間は、かすかな両当たりで(2重キズミでやっと解る隙間)、天真を中心として、できうるだけ偏心しないで伸縮しなくてはなりません。 ヒゲ全体も完全な水平でなくてはなりません)。

苦言を呈したいのですが、もう少しヒゲゼンマイの理論と実技の修得をして欲しいと思います。
1日の修理個数のノルマを消化するために、このような修理になってしまうのかも知れませんが、お客様から修理代金を頂戴する以上、もっと完璧に直して欲しいものです。

サービスセンターの若手修理技術陣の人や、近江時計学校の生徒さん、ヒコミズノの時計学校の生徒さんには是非下記の本を入手して熟読して欲しいと思います。
H・イェンドリッキー著(小牧昭二郎先生翻訳)『腕時計の調整』、同じくH・イェンドリッキー著(CMW小野茂先生翻訳)『時計技術入門書』、 ドナルド de カルレ著『実践的腕時計の調整』です。

この3冊の本を私は若いとき何回となく読むことによってCMW試験に合格しました。
今ではなかなか入手出来ない本かも知れませんが努力して捜してみてほしいと思います。

●時計の小話 第136話(何と言っていいやら No.1)●

最近、こんなひどいことが連続してありました。

その1、
一昨年の秋、店を手伝っている娘Y子の京都の短大時代の仙台の友人Iちゃんが石川県に遊びに来て、弊店にてシチズン・クロスCを気に入って買っていただきました。
今年2月に電池切れで止まったので、仙台の大手スーパーJに出店している時計店に出向き、電池交換を依頼したそうです。
そこの店では直ぐに電池交換が出来なかったので、預かって下請けの修理専門会社 (F・・・)に出すということで時計を預かったそうです(簡単な電池交換も預からなくては出来ないという時計店も存在するのですね。情けない話ですが)。

そうしたら、暫くして電池交換しても動かないから分解掃除(修理代7000円)をしないとダメだという連絡が店からIちゃんに入りました。
それまで正確に動いていて、電池交換に出した途端、壊れるなんて不思議に思ったIちゃんは、仙台から当店に電話をかけてきました。
当店も販売した手前、たとえ1年過ぎていても、それなりの保証しなくてはならないために、石川の方に腕時計を送ってもらいました。

裏蓋を開けてみて吃驚しました。
コジアケでケースを開けるときにミスの作業をして、電子コイルを切断しているではありませんか(シチズンにもケースの設計ミスと思われる点もありました。裏ブタのこじ開けるところの印のミゾの近くにコイルがあったのです。普通は反対側にあるのですが)。

自らの作業ミスを棚上げにして修理代をお客様に請求するとはたまげました。
さっそくIちゃんに電話をして仙台の大手スーパーJに出店している時計店に強く抗議するように伝えました。
Iちゃんは仙台の時計店に出向き抗議したところ、店の店員が下請けの修理専門会社に電話をして、修理専門会社の職人が渋々、作業の失敗を認めたということでした。
コイルを無料で交換するという事で一件落着して、時計を仙台に送り返しました。

その2、
金沢市内のお客様がクォーツが突然止まったので、K市内にあるD百貨店の時計売場に電池交換の依頼に行きました。
そうしたら、そこの販売員さんがオーバーホールをしないと動きませんというのです。
舶来品でしたので2万円以上はみて下さいと言われたそうです。

そこでそのお客さんは当店の雑誌の記事を思い出し、D百貨店の時計売場に修理依頼せずに時計を持って当店に来られました。
さっそく見てみますと、単なる電圧低下による止まりと判明し、電池交換(900円)で正常に動くようになりました。

百貨店も売上げダウンを何とかしたいためにいろんな方策を練っているのでしょうが、これはいただけませんよね。

その3、
N町のお客様が持っている2個のオリエント腕時計のガラス縁の接着剤が乾燥萎縮して紐状になり、文字板の中央部に張出し、その為に針が引っかかって止まるという故障の修理を近くの時計店に持っていきました。
そこの店主はこれは分解掃除をしないと直らないと言ったそうです。
修理料金はOH代金3000円で2個で6000円と言うのです(クォーツのOHは機械式と違って易しいとは言え余りにも安すぎますよね)。

そこでそのお客様はゴミみたいな物が引っかかっているだけでそれを取り除けば直るのではないかと素人判断して、当店に持ってこられました。
当店はガラスを外して古い接着剤を取り除いて、再度接着して修理しました。
料金は2個で3000円頂戴しました。

肝に銘じて恥ずかしくない仕事をしたいと思った今日この頃の出来事でした。

●時計の小話 第137話(IWC・GSTアラームの修理について)●

読者の方から先月、IWC・GSTアラーム腕時計(定価66万円)の修理依頼を受けました。
雑誌ではよく見ていましたので、どんな機械が搭載しているのか?興味津々でした(IWCは最近ほとんどの時計にETA社ムーブを採用しているので、久しぶりに自前の機械を入れているのかなと半分、期待していました)。
カタログでははっきり書いていないので想像が出来ませんでした。

裏ブタを空けてみて解りましたが、ジャガールクルトのマスター・レヴェイユ(Cal、918)の機械とまったく同じでした。
音色ははっきり言ってジャガールクルトの方が良かったような気がします(リンの形状がJ・Lの方が工夫されています。マニューファクチュールだから当然かもしれませんが)。
美しい機械で、修理しながら、さすがJ・Lだと関心仕切りでした。

分解途中でドキッとしたことは緩急針のひげ棒(ヒゲ受はありました)が無かったことです。
一瞬、前回の修理者がミスして折ったのではないかと疑いました。
スイス高級腕時計は普通は2本のひげ棒でヒゲゼンマイを支え挟んでいる(ヒゲ棒とヒゲとの隙間は理想は0,0076mm以下)のですが、其れがまったくないのです。
ヒゲ受の外側にヒゲが付いているのみで、それで緩急を調節するのです(一種の外側片あたり状態)。
30年修理してきて初めてお目にかかる方式です。
この方式で精度が出るのかと疑いましたが不思議と精度は出ました。
よっぽどテンプ一式の片重りを調整と、ヒゲの内端曲線修正しているものと想像しました。
でもこの方式は他のメーカーに真似て欲しくないと思いました(私見ですが邪道のような気がします)。

●時計の小話 第138話(何と言っていいやら・・No.2)●

その4,
M市のある時計店に、お客様が調子の悪くなったメカ式腕時計の修理を持っていきました。
そこの店主は中を見て分解掃除をしないと直らないと言ったそうです。
そこでその人はその店に修理依頼をしました。
暫くたって電話がかかり、直らないから取りに来るように言ったそうです。
取りに行ったら、機械が全てバラバラになって返されたそうです。
大事な記念の時計をバラバラにされそのお客さんは大層怒っておられました。
やはり、喩え万が一直らなくても組立してお客様に返却すべきではないかと つくづく思いました。
もう二度とあの店には行かないと、そのお客さんは立腹しておられました。

その5,
これは昨年の話です。
ROLEX等2個買っていただいた信用できるMM読者の方から、IWCインジュニア定価60万円の注文が入りました。
かって当店に黒・白1個在庫あったのですが売り切れてしまい、生産中止のために補充仕入れが出来ない状態でした。
うっかりしてHPにそのまま載せていたものですから注文きたものと思います。
実績のあるお客様ですから何とかしたく、あっちこっちの輸入元を捜しました。

そうしたらある情報から、M店に何個かあるというではありませんか(これは渡りに舟でした)。
頻繁に時計雑誌等で宣伝している店なので信用できると思い、電話をかけ無理言って、何とか業者分けをしてもらえないか頼みました。
念には念を入れ、間違いなく未使用の新品であるか、経営者と店長に確認しました(そのM店はいろんな時計の新品と中古も取り扱っているので)。
2人とも間違いなく新品だと言うではありませんか。
良かった、見つかったと心躍る気持ちでした。
値段の方も実勢販売価格より、快く数%やすくしてくれました。

早速代金を振り込んで商品を受け取りました。
荷を開けてみて吃驚しました。
未使用品をお願いしますと、あれほどしつこく確認したにもかかわらず送られてきたモノはユーズドの程度のイイ中古品でした。
箱も白色が黄ばんでいてほころんでいたり、時計のケース・バンドにも細かいキズが少なからずあるのです。
針も下手な職人がいじったらしく傷だらけなのです(解らなければ新品として売る気だったようです。 そんな騙されるような素人の私ではありませんが)。

頭を金槌で殴られたショックでした。
あれだけ念を押して信用して代金を送ったにもかかわらず見事に裏切られてしましました。
どうすればイイのか、しばらく途方に暮れました。
管轄の・・市警察署に相談し、M店まで出向いて何とか支払った代金を回収しました(突然、M店に私がきたものですから、店主、従業員は目を白黒していました)。
有名な会社・大きな店が100%信用できるとは言えない時代なのかも知れません。

●時計の小話 第139話(クロノグラフの修理について)●

最近、クロノグラフの修理依頼が大変増えました。
この傾向はますます拡大していくようです(10年程前にはメカ式クロノは年間数本の修理依頼しかありませんでした)。
スイス時計メーカーが、こぞってよく売れるクロノの新作を出すからでしょうか。
若い人を中心にクロノの人気が拍車をかけているのも大きな原因の一つに違い有りません(ROLEX・デイトナの爆発的人気の影響が一番でしょうか)。

一般の手巻きや自動巻きと違ってクロノの分解掃除は大変厄介で手間とコストがかかります(手巻きは部品総数が100個未満ですがクロノになると350個前後の多さになります。細かいバネが10個以上にもなります)。
ユーザー方々の誤作動により壊れたものは余計に修理に時間がかかります。

各種の針もシッカリ歯車に取り付けていますので、簡単には剥がれません。
元シチズンの野元輝義先生(CMW)は『エイ・ヤー』と気合を入れて剣抜き器で針を抜くと言っておられます(繊細な時計修理なのに剣道の試合のようですね)。

慎重の余りびくびくしながら作業をしますと、針じゅう傷だらけになってしまいます。
特に注意を要するのは、針についてある夜光蛍光塗料です。
劣化や外部からの強い衝撃で目に見えない細かいヒビが入り、どんなに熟練技師でも、剣を抜く時にちょっとした衝撃で剥がれ落ちてしまう可能性が多大にあるのです(あるサービスセンターではクロノの分解掃除時に針を交換すると明記している所もあるくらいです)。
私も今まで30年間で何回も冷や汗をかきました。
これは万が一、剥がれ落ちてもまったく不可抗力?なのです(腕の未熟さは別の問題ですが)。
剣を抜く時は寒い時でも全身に冷や汗をかくのです。
思い出しただけでも、ぞーとします。

また、使用中に針や、文字板の夜光蛍光塗料が剥がれ落ち、その細かい破片がカレンダー窓からムーブメント内に混入して歯車等に噛み込み、突然止まるという故障にも数多くあたりました。

クロノの所有者の方は、メンテナンスに3〜4年に1回4万円以上のOH代金がかかるという認識の上に購入された方がいいと思います(後からこんなはずではなかったと後悔しないためにも)。
それと、クロノは複雑ゆえに故障原因がいろいろ多様に多いという事も知っておいた方がイイでしょう。
どんなに注意深く使用しても、機械式クロノは定期的なメンテナンスは絶対欠かせません(特にスタート・リセットボタンのネジ・バネの錆。クロノは防水と言えども水には全く浸けないほうがイイのかもしれません)。

その点、クロノと違ってROLEX自動巻腕時計はホゾの保油装置に充分、油が注せますので、7年使用してても油が残っているケースに出会います。
さすがだなーとつくづく感心します。
ROLEXは一般のスイス時計(例えばOMEGA・IWC)よりも2倍以上の油がさせる穴石・受石構造になっています。

●時計の小話 第140話(セイコー技術講習会)●

今年3月6日にセイコーパーペチュアル・カレンダー技能講習会を受けるために大阪へ行ってきました(セイコーの技術講習会を受けるのは本当に久しぶりです。何年ぶりか解らないほど前回は遠い昔です)。
2100年までカレンダーをいじらなくてもいいフル・オートカレンダー・ムーブを搭載しているセイコー腕時計の技術講習です(小売価格は45000円〜80000円の価格帯の時計です)。

大阪難波神社 難波会館2階会議室の狭い会場に熱心な技術者30名弱が集まって開催されました(講師は第二精工舎・現(株)セイコー・インスツルメンツから4名の方がきておられました)。
人口800万人が住む大阪府ですから、100人以上の時計技術者が来ているのかなと思っていましたが、余りにも少ないのでビックリしました。

私が若い時、滋賀県の時計店を対象にしたセイコー技術講習会に何回となく行ったとき、大津の会場(近江時計学校)にはいつも50人〜80人以上が集まっていて大盛況でした(昔は昼には豪華な弁当を出したり、至れり尽せりのセイコーの接待?講習会でしたが、不景気な今、連続赤字のセイコーには台所事情が苦しいのでしょうか、お茶一杯も出ませんでした。 それよりも既存の時計店の販売力に、とうにセイコーは見切りをつけているのかも しれませんが)。

一通り簡単な分解・組み立てをしてきましたが、これが腕時計の機械かと疑うほどのものでした。
時計というより、もう完全なマイクロ・エレクトロニック製品でした。
いくら年差20秒という正確さでも、少しも魅力を私は感じない腕時計の機械でした。
プロの私が感動しないのだから、一般のユーザーには人気が出ないのではないかとセイコー社には悪いですが想像しました。

電池交換も厄介で、この講習会を受けなければ出来ない難しい仕組みになっていました。
この時計を持っておられる読者の人は、そのことを店の人に確認の上、電池交換を依頼してください。

この講習会に行って大きな収穫は、メカ式G・Sにシースルーバックの時計を開発中であるという事を講師の方から聞きました(メカ式の時計は機械の中が見えるシースルーバックの方が断然、魅力的ですものね)。

それと、要望としてメカ式K・S(キングセイコー、小売上代15万円前後)の復活を提案しましたが、アッサリ断られてしまいました(2000個生産して1000個売れ残ったら赤字になるという事でした。その価格帯にはスイス時計メーカーの強いライバル(オメガ・ホイヤー・ロンジン・ノモス・オリス等)が一杯いるので、勝つ自信が無いということでした。セイコーの熱烈なファンの私にとって少し寂しい言葉でした)。

そういえば、何故ROLEXはシースルーバックの腕時計を造らないのでしょうか?
おそらく防水機能の面で不安があるからでしょう(この間修理したCal、1601は形容ができえないほど見事な機械でした。このムーブをシースルーバックにしたROLEXが出たら沢山売れると思うのですが)。
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