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国際時計通信『水晶腕時計の興亡』
時計の小話
続・時計の小話
121話〜140話

●時計の小話 第41話(最近の腕時計の消費動向について)●

最近、電池交換でご来店されるお客様の腕時計を拝見すると、どうみても2千〜5千円位の低額の時計がほとんどです(高くても1万円前後の腕時計の電池交換が多いのです)。
一人のお客さんが一度に数個の安い腕時計ばかりの電池交換にご来店されるとウンザリ?(ちょっと失礼かな)してしまいます。
電池交換の10個のうち8個はそんな廉価なクォーツ腕時計で、益々その傾向が顕著になって きたような気がします。
不景気という時代背景があるかもしれませんし、地域的か何か他の特殊な原因かもしれません(他店より電池交換料金をかなり安くしているため?)。
時計宝石店を経営していて、毎日ガッカリする今日この頃です。

ここ数年、ロレックス等の高額品を買われる人と極端な低額品を買われる人との二極化が ますます進展したようです。
中級品の5〜10万円を購入される人がかなり減ってきていると感じます。

昔、腕時計は貴重品で、旅館に宿泊した時はフロントに預けたものですが、 そんな風潮はもう無いと言ってもよいかもしれません。
日本人は腕時計に金をかけた民族と言うのはもう昔のことで、TPOにあわせて安くても正確に動けばいいと言う人たちが確実に増えてきたようです。
一度目の電池交換時ですら、もう動かない腕時計によく直面します。
国産のある時計メーカーの安価なアナログクォーツ腕時計の3個に1個は一度目の電池交換時にすら動かないムーブメントが入っています。

時計店で買わなくてもどこでも、そこそこ時間のあう時計が安く買えるために、時計店及びメーカーが斜陽化していったものと思われます (後継者問題もありますが、若い人たちにとって魅力がない業界の一つかもしれません。 スイスも20〜30年程前のクォーツ腕時計化のため若い人々が時計メーカー業界に入らず、 技術者の空洞化現象が起きたのです)。
靴下のはき捨てのように壊れたら修理しないでポイと捨ててしまうような腕時計を 身につけることはなんだか寂しいのではないでしょうか。

このメールマガジンを愛読しておられる方々は、時計の大好きな人々だと思います。
そして長くご使用に耐えられる、愛着がおきる良い時計を1個か2個お持ちだと思います。
こういった方々をこれから大切にしていかないと、この業界は益々沈澱して行き、 明るい時計業界の未来が無いと言っても過言ではないでしょう。

低価格のクォーツ腕時計は地板・歯車にプラスチック樹脂を多量に使っている為に、 私などはいくら正確さが抜群であろうとも、精巧なオモチャのようにしか思えてなりません。
その点、メカ時計は芸術的な精密機械と思えるほどムーブメントは美しい動きを致します。
防水性能がしっかりした、裏蓋がスケルトンのメカ時計をメーカーはもっと生産すべきだと思います。
あの美しい動きの姿を見たら、安いクォーツ腕時計を買う消費者の人達も、きっとメカ時計に回帰してファンになるに違いないでしょう。
特殊な職業人を除いて、1日に30秒狂ったところで、何の生活に支障をきたすでしょうか。
秒刻みの生活よりも、ノンビリとゆったりと生きて行きたいものです。

●時計の小話 第42話(女性用・機械式腕時計について)●

ここ十数年のスイス及び日本の時計メーカーの機械時計復活にかける情熱は目を見張るものがあります。
しかし残念ながら、女性用のメカ時計の再生産の噂をあまり耳にしません。
メカに弱い女性(失礼御免なさい)が多い為、そういうニーズがないので敢えてメーカーが 作らないかもしれません。
生産をしたところで採算ペースにのせるのは至難のワザでしょう。

これまで安定して女性用のメカ時計をたゆまず市場に供給してきたメーカーはロレックス社一社のみだと思います。
かってはセイコー・シチズン・オメガ・ロンジン等の有力メーカーも婦人用の手巻き・自動巻の腕時計を盛んに作っており、新しいムーブの開発にも力を注いでおりました。

女性用を商品化するために小型化(径20mm以内)・軽量化・薄型化は非常に難しいものなのです。
デザイン優先の女性消費者の皆さんは、中の機械がクォーツであれ、メカであれ、 あまり関心が無い為かもしれません。
男性は車のメカにも非常な興味があるように、腕時計のメカにも興味があるために機械式が復活したのでしょう。
ハッキリわかりませんがアンティーク市場にも女性用のメカ時計の取引は皆無の状態なのではないでしょうか。
そういったことを考慮してみますと、ロレックス社の姿勢は他社よりも群を抜いていると思います。
ハッキリした方針があるために、水晶腕時計が出現した時も何ら慌てる事もなく 女性用機械式腕時計を自信を持って作り続けたのに違いありません。
防水性・耐久性・機能・精度等の総合力を判断して女性用も自動巻腕時計が最高と決断したものと思われます。

ロレックス社は1954年に婦人用自動巻腕時計をつくっております。
1972年に発売したキャリバー2035,2030を搭載したロレックス婦人用自動巻腕時計は緩急針調整のヒゲ棒が人造ルビーで出来ており、大まかな所はそこでやり、マイクロステラ微動調整用特別スパナーで秒単位の微調整が可能の素晴らしいムーブメントでした。
28800振動で、ロレックスには珍しい平ヒゲを採用しておりました。
これほどの美しい婦人用自動巻ムーブをいまだかって見たことがありません。
ロレックス・レディ・デイトジャスト69173型の現行のキャリバー2135、 29石も2035に劣らず秀逸でしょう。

女性の方で機械式が欲しい方は、予算が許せば迷わずロレックスが一番でしょう。
ロレックス等の小型の婦人用自動巻ムーブは磁気にとても影響を受けやすく、 急に誤差が出てきた場合、それを疑った方がよいでしょう。
時計店でいとも簡単に磁気を抜く工具があり、どの店でも無料でやってくれるでしょう。
冷蔵庫のドア、ハンドバックの留め具などには磁石が使われており、注意が必要です (磁気ブレスをして腕時計をするのは論外でしょう)。

●時計の小話 第43話(時計職人の要望と期待)●

弱冠24才でCMW資格を取得した私は、当時父の時計店を手伝っておりました。
アメリカのベンラス時計に留学出来なかった私は、どうしても海外に出て腕を磨きたいと いう夢があり、カナダのロレックスサービスセンターに手紙を出し就職を依頼しました。
私の友人の竹内一詔氏(CMW)もカナダのバンクーバーで時計職人として働いていたからです。
快諾を得ましたが、いろんな反対に遭い断念せざるを得ませんでした。
それじゃ日本のどこかのサービスセンターに入ろうかと思いましたが、それもいろいろ考えてやめました。
サービスセンターに入った場合、一つか二つのメーカーの腕時計ばかりする事になり、単調になって飽きてしまうのではないかと思ったからです。
いろんなメーカーの腕時計(掛け時計・置き時計の修理も大変好きでした)の修理を したかった私は、そのまま時計店で修理の腕を磨く事に専念しました。
手引き書(マニュアル)通り何も考えずに分解組立するよりも、パーツの役目等試行錯誤 しながら分解・組み立ててゆく方に時計職人としての醍醐味が味わえると思ったからです。

複雑時計になると部品数が200前後になる為にスケッチをして忘れないようします。
組み立てる時はまさしく2000ピースのジグソーパズルをとく心境です。
考えながら組立調整するのは時間がかかりますが、その時計の持ち味がよくわかります。

先日も少し水の入ったセイコークルージングマスター7k36A(多軸9針、定価10万円の品、発売後5年くらいで生産中止か?)の修理依頼を受け分解掃除をしましたが、組立部品数92個と、クォーツとしては割と多い方で厄介な難物でした。
出来上がった時は疲れてはてて感動はありませんでした。
メカ時計で難物の場合、やはり疲れますが修理完了時には必ずいい知れない喜びがつきまといます。
メーカーの設計技師の方には、このようなクォーツの複雑時計はもう作って欲しくないものです(我が儘な要求ですみません)。

日本での時計職人として最高の評価を得ておられる日本時計師会元会長:井上信夫先生は、スイス・タバン社製の超複雑の自然打携帯時計(あまりの複雑さ故、著名などこの時計店、 時計メーカーへ持っていっても断られた時計と依頼者は言ったそうです)の修理を頼まれ、 数ヶ月かかって直されたことを以前、本に公表されましたが、その時の喜びは時計職人しか解らない身震いするほどの、ものすごいものだったと言っておられます。
難解なクォーツ腕時計の修理にはこういった感動はあまりないと思います。
私も今まで数え切れないくらいクォーツ腕時計の修理を致しましたが、何ら感動、印象も受けません(どんな高価なクォーツ腕時計でさえ。まだテンプ式のエレクトロニック腕時計や音叉腕時計の方が感動したり感銘を受けたりします)。

接客して時計の修理を預かる時、どんな方がどんな時計を身につけているのかとても関心があります。
また故障の具合を問診して尋ねるのも大切な事です。
どんな使い方をされてるのか知る事により、故障の原因(どのような腕時計であれ、水・汗・磁気・衝撃が最大の敵ですが)等が推測出来るからです。
読者の方も修理依頼する時は出来うる限り故障の状態を詳しく伝えるのがイイでしょう (サービスセンターに勤めているとそういう情報は手に入りにくいかも知れません)。

以前卸商に聞いた話ですが、京都の少し落ちぶれた?(失礼)老舗の時計店に身なりのイイ お客がぶらっと来店し、時計革バンドを購入されて、その時接客した店の修理担当の番頭さんが その客の腕時計を大変気に入り、サービスでケース・風防磨きをして上げたところ、 いたく感動したそのお客さんは、それ以降その番頭さん指名で数年に渡り高額の贈答品を大量に注文したとの事です。
そのお陰でその店は押しも押されぬ大店になり、現在大いに繁盛 しているとの事です(そのお客さんは大手一部上場商社の社長さんだったらしいのです)。
そういった出会い・ご縁が店をやっているとあるという事です。
商売していると毎日気は抜けないですね。
たとえどんな細かいお客様でも。

●時計の小話 第44話(クロックのムーブメントについて)●

先日、N町のNさんというお客様の所にお伺いしたところ、居間の柱にセイコーソノーラという本打式のトランジスタ振り子掛け時計がかかっておりました。
聞くところによると35年間一度も分解掃除しなくても正常に動いているとの事でした。
5cm四方のコンパクトな機械でしたが、まさかここまで動くとはビックリ仰天でした。
私もセイコーソノーラを何回となく修理したので、簡単で良い機械であった事を覚えて いますが、ここ最近はほとんど修理していないものでした。
改めて、さすがセイコー舎だと感心しきりでした。

セイコーコロナ目覚まし時計も何回も修理の耐えられるしっかりした地板の目覚まし時計でしたが、さすがにもう見かけません。
今では骨董価値があるかもしれません。

その点、現在流行のからくり時計は何年使用に耐えられるか見物です。
メーカーの人に悪いのですが、よくもって7年〜10年が限界ではないでしょうか。
おそらく10年過ぎれば修理不能でしょう。
至るところにプラスチック樹脂を使っている為に、昔の時計のように30〜40年も使えないものです。

昔のウェストミンスターチャイムのゼンマイ式置き時計や重鎮式のホールクロック置き時計も素晴らしい機械で、所有されている人は大事に残したいものです (どの国産メーカーも生産中止しています。もう二度と手に入らないでしょう)。

●時計の小話 第45話(ジャガー・ルクルトについて)●

IWC(インターナショナル)、ジラールペルゴーに優るとも劣らない時計一貫メーカーの中に、ジャガー・ルクルト(ムーブメント供給メーカーでもあります)があります。
数あるスイス時計メーカーの頂点に位置する高度の技術力、先進的な開発力をたゆまず維持してきたメーカーの一つです。

アントワーヌ・ルクルトが、スイス・ルサンティエにて1833年に創業した歴史的に由緒ある会社です。
非常にレベルの高い腕時計を生産しているために年間生産数は約4万前後と少量ですが、どれをとっても素晴らしい時計ばかりです。

ジャガー・ルクルトといえば今から30年程前に、径20,50mm厚さ1,50mmという工芸的な世界最小の極薄2針手巻き腕時計を開発した事で有名です。
50円玉硬貨の大きさで、厚さ(1,75mm)はそれよりも薄いといえば皆さんビックリされると思います。
テンプのアームを2段階にして、窪んだ所にヒゲゼンマイをセットするという離れ業で薄くする工夫がなされているのです。

厚さ2mm以内の極小ムーブメントを開発成功した時計メーカーは今まで僅かにしかなく、パテック・ピアジェ・バセロン・オーディマ・コルム・インター・オメガ・セイコーという名だたる時計メーカーが連ねております。
ムーブを薄型化・小型化する事は、大変な設計力・技術力を必要とする事なのです。

また、世界で1番小さいリビエという手巻き2針の婦人用ムーブメント(21600振動、19石、パーツ数98個)を開発しています(縦14,00mm×横4,80mm× 厚さ3,40mmという大きさで読者の皆さん物差しで一度想像してみて下さい。 こんなにも小さなムーブでありながら1日ちゃんと動きそして時間も正確なんて、 どう考えても不思議ですね) 。

ジャガー・ルクルトを世界的に有名にしたもう一つの技術に、1930年に発明した気温の変化をエネルギー源として駆動する(アトモス)置き時計を作ったことでしょう。
ゼンマイを巻き上げる必要もなく、電池を入れ替える必要もない置き時計で、その当時ではセンセーションを起こしました。

各種レベルソに搭載された角形ムーブメントのトゥールビヨン、ミニッツリピーター、永久カレンダー、クロノグラフも自社開発しております。
そのことを考慮すれば、ある一面に置いてはロレックス社、インター社よりも、かなり上を行く時計メーカーと言って差し支えないかもしれません。

地方都市にて時計店をしております関係上、なかなかジャガー・ルクルト腕時計の修理におめにかかれないと言うジレンマがあります。
その点ジラールペルゴーと一緒でもっともっと修理をしてみたい腕時計メーカーの数少ない 一つです。
ジラールペルゴーと同じく日本でもう少し売れてもおかしくない時計です。
日本でのネームバリューが少し弱いのと価格が高い(高くて当然なのですが)ために 普及が今一歩と言うところかもしれません。
しかし本当の時計通の人は買っているに違いないでしょう。

●時計の小話 第46話(時計旋盤作業について、その2)●

このメールマガジンの読者の方に、時計メーカーのサービス部の人や、舶来品輸入元サービス センターに勤めておられる人からのメールの問い合わせがいろいろあります。
その中で一番多いのが時計旋盤の作業修得についての質問です。
また、他業種から時計師になるにはどういう手順を踏めばいいのかという質問や、どうすれば一流の時計師になれるかというメールがきます。
若い人々がこの業界に魅力を感じ関心を持たれることは有り難いことです。

時計修理には、時計旋盤技術を習得する事は必須です。
時計旋盤を自由に使えてこそ本物の時計職人と言えるのです。
時計部品を自らの手で製作できる人こそ真の時計修理技術者と言えるでしょう。
ですから時計職人のことを英語ではウォッチメーカーと言います。
しかし残念ながら1、2級時計修理技能士試験に時計旋盤作業の課題が未だかってないのが不思議でなりません。
技能検定委員はなにを考えているのでしょうか。

メーカーに部品ストックがなく、天真・巻真等を別作しなくてはならない時は旋盤作業が避けて通れません。
時計工具を自作するときもあります。

旋盤技術の腕を上げるには、切削バイトを上手く作って磨けるかにかかるでしょう。
バイトを親指と人差し指で掴み小指と薬指とに挟んで安定して荒砥石でむらなく磨き、仕上げに油砥石で完璧に磨くことが出来ればもう後は簡単です。
バイト磨きが全てと言ってもイイかもしれません(切れ味のイイ、刀を作る刀鍛冶の心境でしょう)。
私はバイト磨き技術及びバイトの切削角度を習得するのに、若い時、そればかり して1ヶ月以上かかりました(修業時代、四ツ割にセイコーコロナ目覚ましクロックのテンプを挟んで天真研ぎを何度となくしたことが非常に役に立ちました。クロックの天真研ぎは簡単な作業のようですが、完璧にするにはとても熟練を要します。 手が安定していないと綺麗に出来ないからです)。
バイトを見ればその人がどれほどの旋盤技量を有しているか一目瞭然です。

時計旋盤技術の指針として下記の本があります。
(株)村木時計(現(株)ムラキ)発行 大川 勇先生著 『時計旋盤工作』
(株)グノモン社発行 訳者 末 和海先生 『標準時計技術読本』
これらの名書は既に絶版になっているでしょうから、手に入れるのは大変ですが、発行元や近江時計学校やヒコみずの時計学校には必ずや一冊はあると思います。
ご覧になりたい方は問い合わせるとイイでしょう。
コピーぐらいさせてくれるかもしれません。

時計旋盤にはボーレー社と国産では松田光(アロウ)が高性能で有名です。
私は廉価?ながら良い旋盤であるゼム社製を使用しております。
時計旋盤をお求めになりたい方は五十君商店、トップオカモト、ベルジョンに問い合わせるとイイでしょう。

●時計の小話 第47話(スイス高級腕時計の価格について)●

平成元年、贅沢品に課せられていた物品税が廃止となり、スイス高級腕時計も軒並み価格を下げました。

ロレックス18金無垢デイデイト(18038)は昭和60年時代、定価398万円で、正規輸入品の仕入れ価格は66,7掛けの265万円もしておりました。
並行輸入品ではそのロレックスは119万円で仕入れられました(1個の仕入れ値段で 2個仕入れてもまだお釣りがあったのです)。
当店では当然、並行輸入品を仕入れてお客様に安く売ることで、とても喜ばれました(正規輸入品であれ並行輸入品と何ら変わらないのです。日本ロレックスの保証が2年と1年の違いでだけです。そんなに1年や2年で壊れる時計ではないのです)。

平成の時代になると18038は消え、変わりに18238が登場しました。
18038とほとんど同じようなデザインでしたが、小売価格は188万円と大幅にダウン しました。
当然仕入れ価格も正規輸入品で125万円まで下がりました(現在では18238の並行輸入品の仕入れ価格は115万円程です)。
18038の在庫を抱えて いた当時の時計店は大変だったと思います。
それにしても物品税13%が廃止になったとはいえ、ロレックス(18038)の小売り価格設定には疑問を感じざるを得ませんでした。

昭和40年頃、舶来高級時計に対して30%の関税、13%の物品税、合計43%もの税金がかかっておりました。
小売店のマージン35%、卸商(ロレックスの場合、卸商は一新、栄光、東邦など)のマージン5%?、輸入業者のマージンを入れたら本当の 輸入原価とはいかほどか、驚くほど安かったに違いありません。

日本ロレックス社は2年保証ということで並行輸入品との差別化をしておりますが、真贋が見極めることが出来、信用のおける時計店で並行輸入品を購入されたら消費者の皆さんはもっと安く買えると思います。
出来るだけ安く買えた方がイイに決まっておりますものね(あくまで正規輸入品にこだわる人は別ですが)。

どうして時計に限らず、舶来有名ブランドが日本ではこんなに価格設定が高いのでしょうか。
独逸のベンツ車しかり、ルイヴィトンしかりです。
安く売ってみんなが持っていれば優越感に浸れないためか?自尊心をくすぐるための物なのか。
私には解りませんが余りにも普及すると値打ちが下がってしまうものなのでしょう。

そういえば圧倒的人気のあったフェンディの傘をライセンス生産していた京都のムーンバット社は契約をうち切られてしまいました。
鐘紡もクリスチャンディオールのライセンス生産打ち切りと聞き及んでおります。
両社ともこれらの品がドル箱だったため、稼ぎ頭を失って本当に痛いでしょう。
フェンディ、クリスチャンディオールは売り上げよりもブランド・イメージを大切にした結果かもしれません。
高級ブランドは、余りにも人気がでて大衆化するとだめなものかも知れないのです。

最近ではブランド品の勝ち組み、負け組がハッキリしてきました。
かっては垂涎の的でも今では見向きもされないブランドがたくさんあります。
栄枯盛衰そのものです。
日本で人気のあるロレックス、オメガの命運はどうなるでしょうか? (私は学生時代アメリカンフットボールをしていた関係でNFLをテレビでよく見ますが、ヘッドコーチの腕にはロレックスの無垢のデイデイトをよく見かけます。やはり米国でも ロレックスはステータスシンボルなのでしょう)。

日本のスイス時計の輸入総代理店の皆様への要望ですが、もう少し安く小売り価格設定を していただけないものでしょうか。
そうすれば、もっとスイス時計が日本で売れると思います。
安くして市場にたくさん 出回ったからといってスイス時計の人気と実力は決して衰えないと思うのですが。

●時計の小話 第48話(公認高級時計師(CMW)試験、復活に向けて)●

昭和56年度(1981年)の第27回の試験を最後に、公認高級時計師(CMW)試験は中断しております。
クォーツ腕時計が市場を席巻した為に、機械式腕時計の修理技術を問うこの試験の存在意義が薄れた為と思われます。
しかしながら国産のトップメーカーのセイコー舎が1992年よりメカ時計の生産を再開 しだし、それに準ずるようにシチズン、オリエントもメカ時計の再生産に乗り出しました。
今日では国産の時計メーカーは新開発のメカ腕時計を矢継ぎ早に発売致しております。
消費者のニーズの高まりと共に店頭にメカ腕時計が沢山並ぶようになりました。

スイスの有力時計メーカーは1980年初頭から、現在のメカ腕時計の復興、隆盛を予感できたのか、20年前よりメカ時計を盛んに開発し生産し市場に出しております。

沈滞している日本の時計店の時計修理技術を向上させる為にも、また若い時計師の目標となる資格や夢、希望を与える為にも、CMW試験の復活が必要と思う今日この頃です。
日本各地に散在している40〜50才代の壮年のCMWの力を結集して、大変な事だとは思いますが、CMW試験を再開したいと私は熱望しております。
30年間この業界に世話になった私の出来るご恩返しは、試験の復活に非力ながら全力を傾注する事だと思っています。
4〜5年後をめどに試験を再開したいといろんな案を練っている今日この頃です。
私の意見に賛同され、少しでも協力したいと思っておられる、まだ若い情熱溢れるCMWの皆さん、弊店にご連絡いただきましたら幸いです。
一人では何もできませんが、多くのCMWの人が集まれば必ず出来ると確信します。
このメールマガジンを読まれているCMWの皆さん、 電話、メール、ファクスでご連絡頂きたいとおもいます。
名工と言われるCMWの各諸先生、先輩諸氏をさしおいて生意気だと中傷され若さ?の暴走だと言われるかもしれませんが、誰かが一歩を踏み出さなくては何も動かないと思い、敢えて未熟者ながら第一歩の行動を起こしたわけです。
CMWが沢山集まって高名なCMWの末和海先生、加藤日出男先生に三顧の礼をもってお頼みすれば必ずや試験再興のために、ご協力頂けるものと思っております。

●時計の小話 第49話(アンティーク・ウオッチ購入のアドバイス)●

読者の方から多い質問が、アンティーク・ウオッチをどうすれば失敗せず上手く買えるかと いう事です。
高いアンティーク・ウオッチ品を買う時は、尚更注意していろんな点検をした方がイイでしょう。
下記に皆さんが簡単に出来る注意事項を列記してみますのでご参考にして下さい。

※古いオリジナルのバンドがついている場合、腕時計のケースの足に取り付けてあるバネ棒が 錆び付いてしまって、取り外しができない場合があるので注意が必要です。
一度バンドがはずれるか確認の必要有りです。

※アクリル風防の場合、古くなると乾燥して細かいキズが入りひび割れを起こしている時があるので、キズミ(ルーペ、拡大鏡)でよく見ましょう。
角型腕時計のガラスはなかなか入手困難な時があるので、ヒビ割れには注意しましょう。

※手巻き腕時計の場合、一度リュウズでゼンマイを巻いてみて、ガリガリギジギジする音の時は、キチ車ツツミ車が破損しているので買わない方がイイでしょう。
リュウズを引っ張って針合わせをする時、軽く、抵抗無くリュウズ・針が回れば、筒車がゆるんでいる為に大幅に遅れる時があります。
針を回してみてかなり重い場合は、日の裏機構の歯車が錆びていたり歯がこぼれていたりするので避けた方がイイでしょう。
リュウズは消耗頻度が高く、よく取り替えている時があるので純正パーツが付いているか確認する。
3針の場合、針が擦れて重なる時もあるので確認する。
リュウズ受けのパイプがしっかりケースにはまっているか、これもよく見ましょう。
はまっていない場合、防水・防汗・防塵機能はゼロです。

※オシドリが摩耗しているとリュウズを引いた時に抜けてしまうので、強く引っ張っても抜けないか確認。

※自動巻の場合、手で回転状に振ってみてローターを回して、スムーズに回転錐が回るかどうかみて見る。
ケースにあたっているような音がする時は修理の必要有りです。
振ってみてカタカタ音がした場合、ネジか何か他のパーツが外れている時があります。
手巻きも可能な自動巻の場合、手巻きで軽くゼンマイが巻けるかどうか確認する。

※高級アンティーク・ウオッチの場合、文字板に複製が利用されている時があるので、目利きのできる人に見てもらいましょう。

※めぼしい時計がある時は、ストップウォッチ機能が付いたデジタルウォッチをアンティークショップへ持っていき、時間の実測をしてみる。
ゼンマイを半巻の状態で平姿勢、リュウズ下(3時)の縦姿勢で各1時間ずつ実測してみる。
1時間に3秒以上誤差(日差72秒以上の誤差になります)がでたら、やめた方がイイでしょう。
平姿勢、縦姿勢の機械の音をよく聞くのもイイかも知れません。
音の調子が違っていたり、音が悪ければテンプの振り角に問題有りです。
振り角が充分でない場合、1日以上動かない時があります。

※文字板にシミ、汚れ、錆がひどいとき、過去に水が入った恐れがあるので警戒の必要有り。

※裏ブタにひどいキズがある場合、未熟な職人がいじった事が考えられるので、ムーブメントの中にもかなりのキズがあると判断した方がイイでしょう。

※しっかりした技術者が分解掃除済みのアンティーク・ウオッチを買われた方が安心でしょう。
店に問いただすべきでしょう。

※できれば通信販売で購入しないで、手にとって納得してから買われる方が失敗が無いでしょう。

※希少価値があるとか、将来値上がりがするとか、滅多に手に入らないとか、甘い言葉を言う店は避けた方がイイでしょう。

※店員の人が時計に詳しく、どのような質問にも厭な顔せずに親切に答えてくれる店で、技術的に裏付けのある所で購入した方が後々のアフターが安心して任せられると思います。

※相場より余りにも価格が安いものに飛びつくのは大変危険です。
必ずや落とし穴が必ずあります。
ただ値上がり目的のみで購入されることは邪道だと思います。
どのような人にも必ず良いところがあるように、どんな機械時計であれ必ずや他にない良いところ何かあるはずです。
それを見つけだすのも一つのアンティーク・ウオッチ蒐集の王道だと思います。

※所有して動かなくてもイイ、眺めているだけで満足されるアンティークファンは別にして、それを日常に使用したい人は、機械時計は寿命があるので出来るだけ製作年代の新しい物を買う方がイイでしょう。
50年以上前の機械式腕時計は、時計としての寿命は尽きていると思った方がイイでしょう。
日本では若年層の人々にアンティーク・ウオッチ・クロノタイプが人気がありますが、欧米では年輩の方々に懐中時計に人気があり対照的です。
私はアンティーク・ウオッチでは2針の手巻腕時計と懐中時計に本当のいい味があると思っておりますが、読者の方は如何お思いでしょうか。
私も余裕ができたらパティック・バセロン・オーディマの2針の手巻腕時計や、インターの懐中時計を蒐集してみたいと思っております。

●時計の小話 第50話(パテック・フィリップについて)●

シドニー五輪女子マラソン金メダリスト、高橋尚子選手が10月30日に国民栄誉賞を 贈られました。
その副賞にパテック・フィリップ(アクアノート94万円)が高橋選手の希望で授与されました。
高橋さんはなかなかの時計通と思われます。
この業界に身をおくものとして大変嬉しく思いました。

パテック・フィリップ社はバセロン、オーディマ、ピアジェとともに世界最高峰の工芸的高級時計メーカーの一つで150年の歴史があります。
特にパテック・フィリップのムーブメントは、クロノメーター規格よりも更に厳しい精度保証された(ジュネーブ・シール)を受けております。
複雑時計を生産出来る高度の技術力や、世界に右に出るものがいないと思われる時計技術者を多数抱えるメーカーでもあります。

スモールセコンドのカラトラバ18石腕時計を、少ないですが何回となく分解掃除をした経験から申しますと、どこを見ても隙のない完璧な仕上げがされていました。
どのネジ、バネ一つ見ても美しく磨きが成されていて、ドライバーを持ってネジを弛める時など緊張のあまり手が震える様な感じでした。
それほどまでに芸術的な素晴らしい美しさでした。
姿勢誤差を完璧に取ってあり、メカ時計としてはこれ以上の精度を求めるのは無理と思えるほど正確な腕時計でした。
いまだかって並の振動数の腕時計ではこれ以上望めないほど 5つの姿勢差はなかったのです。
当然、巻き上げヒゲゼンマイを採用していました。
タイムグラファーでは、見事な5つ(各五つの姿勢、文字板上下・リュウズ上下・左・)の真っ直ぐな線が出ておりました。
キャリバー?703357、730906は私にとって鮮明に残る最高の手巻腕時計です。

またパテック・フィリップ社は1950年にジャイロマックステンプを発明し特許を取得して おります。
このテンプの出現により緩急針での調節が必要ではなくなり、微調節が8つの錘の移動で簡単に出来るようになったのです。

宝石愛好家は真珠に始まって行き着くところ真珠で終わるともうしますが、腕時計も最後に行き着くところはパテック・フィリップとオーディマピゲの2針手巻腕時計ではないでしょうか。
それに関しては異論はほとんどの方にないでしょう。
トゥールビヨン、閏年表示機能付き永久カレンダー、パワーリザーブ・インジケター搭載のK18金側懐中時計(Ref969、Cal22TQIRM)は、なんと1億1千万円もいたします。
日本で誰か解りませんが1人が持っておられると言う事です。
時計師として一度手に持って中の機械を見てみたいものです。
そんなチャンスはないでしょうけれど。

●時計の小話 第51話(スイス宝飾腕時計のホール・マークについて)●

日本で製造された貴金属製品・宝飾腕時計(ケース)には日本の国旗マークの入った大蔵省造幣局の刻印が押されています。
その刻印が押されていると、国家が品質の純度を保証しているというわけです。
中にはその刻印がない品もあり、その場合18金であっても純度は正確には解らないのです。

スイスで製造された18金無垢腕時計のケース裏蓋内側には、必ずスイス連邦が純度保証するホール・マークが入っております。
スイス全土で17ヶ所の公式試験場があります。
主な所は、ラショウドフォン・ベエンヌ・シャフハフゼン・ニューシャテル・バーゼル・ベルン・ジュネーブ等です。
ケースの裏蓋内側に時計メーカーの登録番号、18K0,750、スイス公式試験場ホールマーク(例えばラショウドフォンの場合、涙型の中に女性の横顔)が刻印されています。

海外で高級宝飾腕時計を購入される人は必ず確認されるべきでしょう。
海外で18金無垢やプラチナのロレックス(18348Aや18346A)等を買われる場合、中の機械は本物であっても、ケースが香港製の18金やプラチナである時があります。
充分注意が必要です。
それほど香港の贋作作りは完璧に近いものです。
18金無垢のバンドも香港製が沢山流通しているのが現実です。

話はころっと変わりますが、ロレックスの水晶腕時計キャリバー5035、11石の クォーツムーブメントを最近修理して見ましたが、ガンギ車ありアンクルありで、さすがロレックス社が作ったクォーツだと感心しました。
しかしセイコーのステップモーター式のクォーツを見慣れている私は何かしら違和感を 感じました。

●時計の小話 第52話(スイス時計・エベルについて)●

世界各国のお洒落な女性に圧倒的人気を独占しているスイス時計メーカーにエベル社があります。
他のメーカーがマネできない美しいデザインのドレス腕時計を作り続けています。
年間製作本数は約10万本です。

エベル社はルイヴィトン・ヘネシーグループに入っており、タグホイヤーと仲のいい メーカーです。
日本の輸入総代理店は以前オメガを取り扱っていたシイベルヘグナー社です。

マニュファクチュール(一貫生産メーカー)ではないのですが、精度を極限まで追求している非常に良い機械が内蔵しております。
何度か修理しましたが、手抜きのない美しい仕上げの精度のでるメカ腕時計でした。
私が好きな時計メーカーの一つです。

エベルは1911年にユージュンブルームによって創立されました。
エベルのネーミングは、自分の名前の頭文字と妻Levyの名前から出来ました。
ほほえましいエピソードではありませんか。
妻の名前を会社名に取り入れるなんてものすごい愛妻家だったのでしょうね。

バルセロナ・ブラッセル・パリ・ローザンヌなどの博覧会で何回も名誉賞を授与されています。
ヨーロッパ・アメリカ(ハリウッド)ではかなり名の通った時計メーカーです。
日本では少しマイナーな感じがするのが残念です。
優れたデザインや良い機械の割には価格が良心的であるために、人気の原因かもしれません。

100円玉硬貨の厚さ(1,70mm)に近い、1,71mmの極薄の手巻き2針腕時計を作れる高度の技術も持ち合わせているのです。
最近の企業活動も活発でいろんな話題を投げかけております。
1911クロノグラフ(9137240−3555)48万円(メタルバンドは55万円)は、スーパースター松坂大輔選手や中田英寿選手が愛用しております。
ボイジャー・ワールドタイマー27万円も人気のシリーズです。
若い人に爆発的に人気がでるのも時間の問題でしょう。
いつまでもロレックス・Gショック一辺倒では寂しいですものね。

●時計の小話 第53話(スイスの時計産業について)●

国産のセイコー・シチズンの腕時計は全て自社生産で、世界でも稀な完全なマニュファクチュール(一貫製造メーカー)です。
全ての部品は系列の子会社で生産されています。
ところがスイスでは日本とは大きく異なったシステムで分業化が進み、腕時計が作られています。
下記のような3つの分類に分かれる時計製造メーカーが存在します。

・マニュファクチュール…自社で一貫して時計製造するメーカーの事で、他社より部品供給を受けません。
ジラールペルゴー・ジャガールクルト・ゼニス・ロレックス・インター(一部)・オーディマ等のごく一部の会社しかスイスにはあ りません。
しかしマニュファクチュールでないからといって、おのおの時計会社の価値が下がるものでもないのです。
※ジラールペルゴー・ジャガールクルトはエボーシュメーカーでもあり、一流時計メーカーにムーブメントを売っております。

・エタブリスール…ムーブメント・ケース・文字板等をいろんなエボーシュから仕入れして組立のみを行うメーカーで、そこで腕時計を完成させます。
スイスのほとんどの時計メーカーはここの範疇です。
オリス(ETA社)・ラドー(ETA社)等たくさんあります。
エボーシュからムーブメント・パーツを仕入れして各社が再加工・再調整して、独自性のあるメカニカル腕時計を作ります。

・エボーシュ…エタブリスールにムーブメント・パーツを供給する、部品・ムーブメントメーカー。
最大のエボーシュメーカーはSMHグループのETA社で、世界最大規模のムーブメント供給生産会社です。
ETA社は1億個以上の生産量を誇り、手巻き・自動巻・クロノ・クォーツ等の各種ムーブを生産して世界中の時計会社に供給しております(推定、クォーツ85%・メカ15%)。
巷に出回っているスイス時計のムーブメントの半分以上はETA社製ではないでしょうか。
他にバルジュー・ヴィーナス・ケレック・ユニタス・フェルサ等が有名で、他にも何十社もあります。
各エボーシュ社が製造メーカー印を持っており、機械の地板に必ず刻印させています。

時計材料店にパーツを注文する時は、時計名とエボーシュ名、部品名を同時に言って発注します。
現在、滋賀県の読者の方より、父親の形見という大切なブライトリング・トップタイム腕時計(手巻き・クロノ・17石・HPに掲載)の修理依頼を受け預かっておりますが、全体的に錆がひどく、機能回復無理な所があり、かなりの難物で悪戦苦闘中です。
この時計のムーブメントはエボーシュメーカーのヴィーナス社製キャリバー178(刻印から判別、星のマークがあり)で40年ほど前のものです。
この時計の壊れたパーツはもはや入手困難でなかなか大変な修理です。

その頃のブライトリングはムーブをヴィーナス社から仕入れて時計を作り販売していたのが解りました。
今でもブライトリング社はグループのケレックからムーブを仕入れております。

クロノの専業メーカーのミネルバ時計もバルジュー社よりムーブメントの供給を受け、アブスシリーズのクロノを発売しております。

●時計の小話 第54話(私見・スイス時計のランク付け)●

読者の方よりスイス時計メーカーのランク付けをして欲しいという要望が沢山あり、独断と偏見のランク付けを私見ながら試みてみました。
いろんな判断材料で、意見は多種多様に分かれると思いますが、あくまで私、個人の意見ですのでお間違えないように。

東正横綱   パティック・フイリップ 西正横綱  オーディマ・ピゲ

東張出横綱 ピアジェ         西張出横綱 バセロン・コンスタンチン

東正大関   ジラールペルゴー   西正大関   ジャガールクルト

東張出大関 IWC           西張出横綱 ユリス・ナルダン(4〜50年ほど前ではダントツで世界一と思う。今、見事に復活し蘇った。これからが楽しみ。)

東正関脇   ロレックス        西正関脇  ショパール

東張出関脇 カルティエ        西張出関脇 オメガ
         ボーム&メルシエ           ゼニス

東正小結   ブライトリング      西正小結   ロンジン
東張出小結 エベル          西張出小結 タグホイヤー
        ユニバーサル              エテルナ

東前頭筆頭 ラドー          西前頭筆頭 サーチナ
        ティソ                   ウォルサム
        ブローバ                 ハミルトン

他にランゲ&ゾーネ・ブレゲ・ブランパン等は大関クラスであり、パネライ・ブルガリ・フランクミュウラー・ダニエルロート・エベラール・クロノスイス・モーリスラクロア等は三役クラスでしょう。
異論はいろいろあるでしょう。
人によってはロレックス・オメガが横綱と言う人がおられると思います。
でも、中の機械をよく知っておられる技術者の人の評価はおそらくこんなランクではないのでしょうか。
くれぐれもこれは私見ですので誤解の無いようにお願いいたします。

今回のマガジンで連載25回目になります。
読者の方々より熱いラブコールを頂き本当に感謝致しております。
この時計の小話を読んで時計のファンになったとか、時計の奥深さを知ったとか、お褒めのお言葉を頂き、やり甲斐がおこると共に嬉しく思っております。
中にはずっと永久に続けて欲しいという熱烈な読者の方もおられまして、身に余る光栄です。
出来うる限り第1部は100回位迄続ける予定でおります。
時計の話は私には無尽蔵ですので時間と体力?の許す限り続けますのでご安心下さい。
また沢山メールを頂き、全ての人に返事を差し上げるべきでしょうが、店の営業、外商、修理 と他にもいろいろ雑用があり、全ての人に返事が差し上げられませんので、この場をお借りしてお詫び申し上げます。
今までに400名様以上の方より温かい励ましのメールを頂きましたが、2名様より苦言叱責も頂戴いたしました。
これも素直に真摯に受け入れまして、よりよいマガジンにしてゆこうと思っている次第です。
今まで25回読んでいただきまして本当にありがとうございました。
次回は節目の26回目になりますのでクイズ25問を出す予定です。
お楽しみにお待ち下さい。


● 時計の小話 第1回問題集25問 ●

第1問 世界最古の時計メーカーはバセロン・コンスタンチンである(正誤)

第2問 世界最初にクロノメーター腕時計を作ったのはオメガ社である(正誤)

第3問 完全防水の腕時計を世界で最初の作ったのはセイコー舎である(正誤)

第4問 日本で最初にクロノメーター腕時計を発売したのはシチズンである(正誤)

第5問 セイコー最初の10振動のマーベル36000腕時計の石数は何石か。
      下記の中から選んで下さい。
     イ、17石  ロ、21石  ハ、23石  ニ、28石  ホ、35石

第6問 鳩時計を専門に製造していた手塚時計(株)はウエストミンスターチャイム置き時計も作っていた(正誤)

第7問 ジャコ・ツールと言う時計修理工具はヒゲゼンマイの縦ぶれ修正に使う工具です(正誤)

第8問 クロノメーター高精度の腕時計は重力の影響を全く受けない(正誤)

第9問 5振動数の腕時計で歯数15枚のガンギ車は1日何回転しますか。
    下記の中から選んで下さい。 ヒント:5振動は1時間にすると18000振動です。テンプ2振動にガンギ車は1枚進みます。
     イ 7200、 ロ 14400 、ハ 28800 、ニ 36000、 ホ 72000

第10問 腕時計の縦姿勢誤差でリュウズ左は最重要である(正誤)

第11問 天真の硬さはビッカース硬度(Hv)300が最適である(正誤)

第12問 メカ腕時計のクロノメーターを一番多く製造してきた時計メーカーは ロレックス社である(正誤)

第13問 ユリス・ナルダンは優秀な船舶クロノメーターを製造してきた世界で有名な時計メーカーです(正誤)

第14問 水晶時計を世界で初めて作ったのはアメリカのベル研究所である(正誤)

第15問 大航海時代、正確なマリンクロノメーター(船に乗せる精度の高い時計)が求められたわけは、1秒狂うと船位が約0,4kmずれたから(現在では六分儀を使用する)(正誤)

第16問 トゥールビヨンとはヒゲゼンマイの温度補正をする装置である(正誤)

第17問 自動巻腕時計の仕組みはウィッグ・ワッグ式が多い(正誤)

第18問 アンティーク懐中時計に使われている鋼ゼンマイが切れるのは、ほとんどサビが原因です(正誤)

第19問 テンプの振り角が小さいほど、姿勢差が大きく表れます(正誤)

第20問 巻き上げブルゲヒゲは切りテンプと組み合わせなければ全く意味がないものです(正誤)

第21問 ヒゲゼンマイをヒゲ玉に取り付けるピンニングポイントの位置は、姿勢差にとって、とても重要です(正誤)

第22問 グランドセイコーの一番安い廉価版の定価は9万円である(正誤)

第23問 シチズンの最高級品ザ・シチズンの一番安い廉価版の定価は10万円である(正誤)

第24問 筆者(磯崎輝男)はスイス時計メーカーの中でオメガの時計が一番好きです(正誤)

第25問 ブライトリングのムーブメントはかの有名なエルプリメロである(正誤)

以上の25問ですが易しいものもあれば、少し専門的な難しいものもあったかと 思います。


● 時計の小話 第1回問題集25問 解答 ●

第1問 (誤)ブランパン

第2問 (誤)ロレックス

第3問 (誤)ロレックス

第4問 (正)

第5問 答ハ

第6問 (正)

第7問 (誤)天真ホゾの修正に使用

第8問 (誤)どんな高級なメカ時計でも姿勢差の影響はでます

第9問 答ロ

第10問 (誤)リュウズ下と左と上が正しい

第11問 (誤)ビッカース硬度(Hv)600

第12問 (正)

第13問 (正)

第14問 (正)

第15問 (正)

第16問 (誤)脱進機姿勢誤差を緩和する装置

第17問 (誤)ハーウッド式

第18問 (正)

第19問 (正)

第20問 (誤)

第21問 (正)

第22問 (誤)10万円

第23問 (正)

第24問 (誤)IWC

第25問 (誤)

●時計の小話 第55話(スイス時計メーカー:ユリス・ナルダンについて)●

イカリのマークのナルダンと言えば、泣く子も黙ると言うほど、数あるスイス時計の中で光芒を放つ堂々とした王者の貫禄があるメーカーでした。
40〜50年ほど前には、今人気絶頂のロレックス・オメガなど敵ではなく、スイス時計の頂点を極めておりました。
1940年代に開発成功したクロノグラフのムーブメントはパティックにも 採用されておりました。
私の父は感情を表に出さない人でしたが ナルダンの修理を預かると嬉しさのあまり家族中に見せて回ったものです。
「ナルダンがやってきたぞー」と。
あの寡黙な父でさえナルダンを預かると喜びを抑えることが出来なかったと思われます。
私がIWCを好きなように父はナルダンが一番好きだったのでしょう。
その頃で年に数個位しか修理依頼はこなかったような記憶です。

ムーブメントは非の打ち所がない完成された時計でした。
日本の市場に余り出回っていない影響でしょうか、現在私の店では残念ながらほとんど修理依頼はきません。

ナルダンは1846年ユリスナルダンによって、スイス:ル・ロックルにて創業され、150年以上の歴史あるメーカーです。
ユリスナルダンと言えば、ゼニス・GPと共に高精度のマリンクロノメーター製造メーカーで特に有名で、水晶時計が出現するまで100年間にわたり40カ国の海軍に公式採用された実績を持つ名門中の名門です。
万国博覧会、国際見本市等での晴れある受賞回数は4300回以上にのぼり、またいろんなコンクールで18回のゴールドメダリストにもなっています。
この功績は他のメーカーの追随を許さないナルダン独壇場のものです。

こんな名誉あるナルダンでさえ例にもれず、1970〜80年代のクォーツ・クラッシュにより会社の存続が瀕死の状態になり、長い間、沈澱しておりました。
高精度の機械時計を製造しているメーカーほどクォーツ・クラッシュの大ダメージを もろに受けてしまったのです(精度競争するとメカ時計はクォーツの敵ではないのです。精度では惨敗するに決まっています。最近思うのですが、クォーツはマイクロエレクトロニクスの大量生産の工業製品で、機械式腕時計は芸術嗜好的手作り製品だと思うようになり、範疇を分けるべきではないかと思うようになりました)。

ナルダンは今は年間生産本数は2万本前後でしょう。
ナルダンの逼迫した状態を救ったのが歴史物理学者のオクスリン博士です。
氏の協力のもと、ナルダン復活・命運をかけて1985年出来上がったのが驚異の超複雑天文腕時計3部作アストロラビウム・ガリレオガリレイ、 テリリウム・ヨハネスケプラー、プラネタリウム・コペルニクス (630万円〜920万円)なのです。
オクスリン博士のことは以前テレビで取り上げられ私は驚愕しつつ見ましたが、ブレゲの再誕ではないのかと思いました。
博士は発想、設計、製作、組立、微調整まですべて一人で行う、現在では世界最高峰の天才的時計設計及び技術者なのです。

ここ数年企業活動は活発で、サンマルコクロアゾネ(金線七宝)シリーズ (180〜230万円)、GMT±パーペチュアル(350万円)、マリンクロノメーター1848シリーズ(94万円)等を開発発売しています。
価格が少し高いのが難点ですが、中にはサンシアーSS自動巻159000円という手頃な価格の腕時計もあり、ナルダンを一度持ってみたい方には入門品としてお薦めです。

このようにしてナルダンは再びスイス時計業界の王道を確実に歩き始めたのです。
いつの日にかロレックスの人気を凌駕する日も遠くないのではないかと思います。
流行に左右されない真の時計愛好家の人々はナルダン・IWC・GP等を買い求めるのではないのでしょうか。

時計の小話 第56話(グランドセイコー(機械式)の生産動向について)

当店にはグランドセイコー腕時計(メカ式・SBGR001定価35万円)の受註残が5本あります。
セイコーウォッチ販売に注文を出しても、入荷は6ヶ月待ちというものです。
担当員に尋ねても、いまの段階では注文をお受けしないと言うのです。
おそらく生産体制が整っていない為と思われますが、一番の原因は技術者が不足しているからだと思います。

クォーツは全自動ロボットの流れ作業でいともたやすく大量生産できますが、高精度の機械式腕時計は熟練の技術者が必ず必要なのです。
ここ数年業績の悪いセイコー舎にとって、高額商品の注文が来て納品できないのは大変痛いと思いますが、1982年〜1992年の10年間、機械式腕時計を製造してこなかったツケがいっぺんにきたものと思われます。
裏を返せば、腕の良い時計技術者を充分に養成してこなかった事が今の事態を招いている ものでしょうし、その頃の経営者の先の読みが甘かったと批判されても致し方ないと思います。
腕の良い技術者は一朝一夕には育たないのです。

1967〜68年にかけてのスイス天文台コンクールにおいて、セイコー舎の活躍は目を見張るものがありました。
スイス有名時計メーカー(オメガ・ゼニス・ロンジン)との精度競争にほぼ打ち勝ったセイコー舎に、その頃奢りがなかったと言えばウソになるでしょう(スイス時計メーカーから、もはや学ぶべき所はないと言うような)。
危機感を持ったスイス時計連合は、CEH開発の水晶時計を開発してセイコーの機械腕時計と精度競争させるほど追い込まれていたのです。
精度の面でスイス時計に勝利したと思ったセイコー舎は、それ以降水晶時計一辺倒になり、徐々に機械時計から離れていったのです。

現在のセイコー舎が、機械式に関してはスイス時計メーカーに大きく水をあけられて しまったのは、機械式においては精度のみが大切と錯覚した当時の経営者・技術者の失敗でしょう。
セイコー舎にとってまだまだ機械式に対して開発研究する課題は沢山あったのです。
トゥールビヨン・ミニッツリピター・永久カレンダー・スプリットセコンド クロノメーター等を開発発売すべきだったのです(それぐらいの技術の蓄積は当時あったと思います。セイコー舎の生産能力からいってかなり安い価格の複雑腕時計が出来たに違いないのです)。
そうしたら、名実ともにセイコー舎は世界のトップメーカーに今頃君臨していたでしょう。
日本人としてとても残念です。

一方その後、セイコークォーツクラッシュに打ちのめされたスイス有名時計メーカーでしたが、その後もじっと我慢して、たゆまず機械式時計の火を消すことなく研究開発に没頭して、今のスイス機械式腕時計を見事に開花させたのです。
日はまた昇るを信じてクォーツに負けることなく、機械式腕時計を今日まで存続させたスイス時計メーカーには頭が下がる思いです。

日本を代表する一流企業の不祥事が多発する現在、ある一面でセイコー舎の良心的な企業姿勢にはとても好感がもてます。
儲け話が目の前にぶら下がっているにもかかわらず、とことん納得出来ない、中途半端な商品(グランドセイコー)は出荷しないというセイコー舎の考えには他社も マネをしてもらいたいものです(私はだからセイコー舎の真面目な姿勢・セイコー腕時計が 好きなのです)。
セイコー舎にとって1960年の発売以来、グランドセイコーはセイコー舎の歴史と誇りと名誉を感じる腕時計なので、中途半端なGSは出荷しないのでしょう。
出来るだけ早く腕の良い技術者を焦ることなく養成して市場の要求に応えて欲しいものです。
セイコー頑張れ!

●時計の小話 第57話(スイス時計 ブランパンについて)●

年間腕時計製作本数6千本前後の小さいメーカーですが、世界に名を轟かせている時計メーカーにブランパンがあります。
歴史は時計メーカーで一番古く、ジャン・ジャック・ブランパンが1735年にスイス・ヴィルレに創業しました。
ゆうに250年以上の歴史がある名門の老舗です(年間生産個数、数千本で非常に優れた腕時計を作るメーカーは、他にランゲ&ゾーネ・ブレゲ・ダニエルロート・クロノスイス等があります。生産個数が多いからと言ってそのメーカーが個性的で優れたメーカーと云うわけではありません。数は少なくとも魅力的な時計を作るメーカーが将来的にも必ずや生き延びて ゆくに違いないのです。そこには深い味わいのある技術が歴然と存在するからです)。

ブランパンは創業以来クォーツは一切作らなくて、機械式時計のみを頑固に作り続けて いました。
現在では下記の6マスターピース以外のムーブメントの腕時計は製造していません。
確固たる信念が経営者にあるのでしょう。

ブランパンも1970年代のクォーツクラッシュによって例にもれず会社存続の危機に遭遇しましたが、オメガのスウォツチ・グループに入ることにより、見事な復活を成し遂げました。

特に、1991年に完成した6大傑作複雑腕時計・6マスターピースコレクション(超極薄時計・月齢カレンダー時計・永久カレンダー時計・スプリッドセコンドクロノグラフCal1186・トゥールビヨン時計・ミニッツリピター時計)は、他社の時計メーカーが真似が出来ないもので追随を許しません。
時計メッカのスイスと言えども、この6大傑作を独自で全て揃えているメーカーはブランパン以外には見当たりません。

ソルボンヌ大学哲学専攻のドミニク・ロアーゾ博士の協力のもと開発成功した、ブランパン1735番は上記の5マスターピースを一個の腕時計のなかに全て収めてしまった超怒級複雑腕時計で、価格はもはや付けられる代物ではないのです。
価格を付けるとしたら天文学的な数字になるでしょう。
どれもこれも素晴らしい腕時計なのですが、価格が高いのでおいそれと買えるものでは ないのが残念です。

その1
ブランパンの極薄腕時計…SS(ステンレス・スチィール・ケース)で65万円
手巻き2針…エキストラ・フラットCal2100
オートマ…9型中3針日付表示・自動巻(世界で最も薄い)男女両方あり

その2
ブランパンの月齢カレンダー時計…SSで119万円
日付・曜日・月・月相を表示する極薄型自動巻腕時計Cal6763
女性用は世界で初めて開発した、直径21mm厚さ3,2mm

その3
ブランパンの永久カレンダー時計…SSで295万円
小の月、大の月、閏年を記憶した無修正のカレンダーメカ時計で、 2100年まで自動的に行う。
水晶時計ではIC導入により簡単に作れるが機械式では時計学史上では驚異的な構造です。
23石、27,40mm、フレデリックピゲ社製のムーブ採用

その4
ブランパンのスプリッドセコンドクロノグラフ時計…SSで190万円
Cal1186自社開発、21600振動・自動巻・12時間計・30分計・クロノグラフ秒針・スプリット秒針・カレンダー付き・部品総数300ピース以上。
スプリッドセコンドクロノグラフとは2つの時間経過を同時に表示できる機能です。

その5
ブランパンのトゥールビヨン時計…プラチナケース・スケルトンで1450万円
8日間のパワーリザーブ・カレンダー付き・21mm径脱進機と調速機をキャリッジ(かご枠)に入れて一定周期で一定方向に回転させることにより、姿勢差を自動的に補正する機能を装備

その6
ブランパンミニッツリピター時計…K18ケースで1500万円
ハンマーでゴングを叩いてミニッツ・クォーター・タイムをカウンターします。
とても美しい音を奏でます。
メカ時計では一番の秀逸の作品でしょう。
径20,30mm厚さ3,20mm重さ5,61g

これらの複雑腕時計の修理は、熟練の親方時計師(MASTER・WATCHMAKER) のいる当店にお問い合わせ下さい(修理期間は3ヶ月間です )。
未熟な修理屋にかかれば、くちゃくちゃにされてしまう危険性があります。

PS
個人的には余り好きではなかったのですが、最近カルティエ腕時計のパシャ・クォーツクロノグラフCal053、22石の腕時計のムーブメントを見る機会がありましたが、なかなか奇麗なクォーツムーブでカルティエを見直しました。

時計の小話 第58話(ムーブメントの美しさについて)●

機械(ムーブメント)の美しさと言ったら、懐中時計(手頃な価格ではIWC・ゼニスですが、それでも40〜60万円します)か、2針の手巻き腕時計(パティック・オーディマ)が何と云っても一番でしょう。
クロノグラフでも、自動巻よりも手巻きの方が美しさでは数段優っております。
自動巻ではローターで駆動部分が隠れてしまうのが致命的ですね。
特に、バルジュー・ヴィーナス・レマニアの手巻きのクロノは30年〜40年前の物でも本当に奇麗です。
見ているだけで感動しますし動いていたらなおさらです。
人間ってなんて美しい機械を創造できるのでしょうか。

懐中時計はメカ時計の原点で、IWC・ゼニスの懐中時計のムーブメントは素晴らしいの一語に尽きます。
懐中時計の針合わせにはリューズ式(現在ではほとんどこれです)の物だけではなく、古くはダボ式・レバー式などがあり、3通りありました。
文字板もグレードによってホーロー製(針を抜くときヒビが入りやすいのでとても神経を使います)・金属ギョーシェ仕上げ・プリント仕上げの3通りあります。

精度調整を示す目安として、地板に2ポジション・アジャステッドとか、5ポジション・アジャステッドとかが刻印されていて、姿勢差をどこまで微調整しているのかを簡単に解るように示しています。
その懐中時計がどこまで精度を追求しているのか知るには、ポジション・アジャステッド(姿勢差調整)のほか、緩急針のあり方を見ればおおよそ、その懐中時計のレベルが想像できます。
ピンセットで動かすだけの簡単な緩急針もあれば、ネジを回して微調整するスワンネック型や、マガ玉型のカム回転式等があり、秒単位の微調整が可能な懐中時計も あります。
高精度高級腕時計がどんなに精巧に時間をかけて微調整しても、懐中時計の精度には全くかないません。
グランドセイコー・ロレックス・オメガ・ロンジンの腕時計等も 真っ青で足下にも及ばないのです。

懐中時計の天文台コンクールでは、メカ時計としては空前絶後の日差0,01〜0,02秒を競う、とてつもない精度追求のコンクールだったのです。
それほどまでに懐中時計は腕の良い技術調整者にかかれば超高精度がでるのです。
皆さんビックリされたでしょう。

国鉄の標準提げ時計に使われていた19セイコー懐中時計は価格が安いにもかかわらず、緩急針調整とテンプのチラねじ(ミーンタイムスクリュウ)とで微調整ができるブレゲ巻き上げヒゲの高性能な時計でした。
そこが今でも人気の秘密かもしれません。

●時計の小話 第59話(贋作について)●

先日こんな事がありました。
東南アジアのある国で働いている一流会社のビジネスマン(日本人)から、オーディマピゲの懐中時計(ムーンフェイス風)を修理して欲しいと言うメールがありました。
その時計は、現地(東南アジアのある国)のアンティーク・ショップで購入した物との事で、友人に預けて弊店に送るから直してもらいたいと言うことでした。

オーディマピゲの分解掃除・修理は一生涯で何十回とする時計ではないので、私は嬉しくて宅配されるのが今か今かと待ち受けておりました。
そして宅急便でようやく届き封をといてみて懐中時計の文字板を見てみると何となく胡散臭く、まさか贋作ではないかしらと言うことが脳裏を走りました。
裏蓋を開けてみてビックリで、程度の悪いコピーのムーブメントが入っておりました。
ムーブの地板にはご丁寧にオーディマピゲの刻印までありました。
贋作品の修理は受け付けていないのですぐ返送いたしました。

友人のお話によると、私どもに送る前に時計雑誌等で有名なアンティーク・ショップ「K店」に一度見てもらったところ、複雑時計で難しくて修理出来ないと言われたそうです。
「K店」から本物?のお墨付き(全く頼りにならないものですが)をもらい、イソザキさんに送ったもので悪意は全然ないと言うことで謝っておられました。

海外で働いておられるそのビジネスマンの方はアンティーク・ウォッチのファンで、今まで10個以上を買われ、1個当たり1,000ドル以下の代物はないと云う、 友人のお話でした。
おそらくその懐中時計も1,000ドル以上出して買われたものに違いないと云うことでした(もし、そのオーディマピゲ懐中時計が本物でしたら何百万円という高値がつく時計なのですが)。

その方は買うたびに「K店」で見てもらい、これは本物ですとか、これはコピー商品ですとかと店員の人にはっきり言われたとのことで、まさかその懐中時計が贋作と思わず、ご本人も友人もガッカリなされておられました。
けっこう有名である「K店」(自前の修理工房もあるところなのですが)の眼識の無さに私は驚きました。

以前にお話致しましたが、高額なアンティーク時計を買われる場合は、目利きの出来る人を同伴してアドバイスを受けて購入される方が怪我はないと思います。
それにしても、アメリカ在住の時計の小話の読者の人からメールが来たり、東南アジアに住んでおられる方からメールが来たり、インターネットはやはりWWWでスゴイなーと実感致しました。
もう航空郵便ってきっと死語になりますね。

●時計の小話 第60話(時計修理技術の伝承について)●

輸入時計商社のサービスセンターでは時計修理技術者の高齢化が顕著になり、問題化しつつあります。
40代後半〜60代の年齢の人がおそらく過半数を占めていると思われます。

機械時計が市場に復調してきた今、将来的にかなりのメカ時計の修理がくるものと思われます。
しかし、もはや時計店で修理対応はほとんど出来ないだろうと予測した輸入時計商社の経営者達が、サービス部門に対して漠とした不安と危惧を覚え、何とか若い時計修理技術者を養成しなくてはならないと気がつきだしたのです。

そこで、輸入時計商社の経営者の有志が集まり、ジュエリーの専門学校であったヒコみずの学校に相談し、協力・賛助金何百万円を提供して、数年前にウォッチ・メーカークラスができたのです。
ヒコみずのウォッチ・メーカークラス卒業者の若い人が輸入時計商社のサービスセンターに就職されていることをよく聞きます。
その限りにおいて、輸入時計商社の経営者の思惑は当たったと言っていいかもしれません。
その一方、滋賀県の近江時計学校では時計宝石店の子弟が多く、卒業後家業を継ぐために郷土に帰って行くみたいです。

20代の情熱溢れる若人がこの業界に魅力を感じ入ってこられる事は非常に嬉しいですが、彼らの期待を裏切ることなく受け皿をしっかりしたものにすることは大切だと感じます。

メーカーのサービスセンターでもおそらく修理技術者が不足していると思われます。
その極端な例として、保証期間中の腕時計の修理依頼が来ると、ほとんどの場合、 修理箇所を直さないでムーブメントをゴッソリそのまま交換してしまうという荒療法をして戻ってくる場合が多々あるのです。
時計店でも、もはや自前で修理する店はほとんど無くなり、メーカーに修理依頼出来ない時は私設のウォッチ・サービスセンターへ送って直してもらうケースが多いと思います。

私がこの業界に入った30年ほど前の頃は、仲間修理という家業の人が人口5万人の長浜という都市にも3軒ほどありました。
その人達は自前の時計店を資金的な面で出店できず、他の時計店の修理(下請け)をする事で生計を立てている人達でした。
今では大都会には一部残っておられるでしょうが、中小都市ではほとんどいなくなってしまったものと思います。
客渡し料金の半分位で請け負っておられたみたいです(現在の比率は解りませんが)。
ただ店がないために腕が良くても辛い立場におられました。
修理依頼した時計店は何もしなくても半分の修理料金をピンハネしていたことになります。

私が少年の頃、難物の腕時計を預かった父がどうしても自分で出来ない時は、その頃長浜で一番腕の立つMA・・さん(一級時計技能士で知事賞受賞・CMW試験を受けられたら必ず合格したに違いない方でした)の所へ持って行くお使いを私はよくやらされました。
その方は真面目で無口で本当に職人の鏡のような人でした。
小さいながらも私はMさんの仕事を見るのが好きで、邪魔をしないでよく側にいたものです。
私とは年齢差がありましたが、相性が合ったのか良く可愛がってもらいました。
そんな事が昨日の事のように懐かしく思い出されます。
そのMさんもクォーツ・クラッシュの影響で修理が少なくなり「仲間修理家業」をやめ、他業種のサラリーマンになられたことを弟から聞きました。
時計が好きで腕(技術)が一流であったMさんにとって断腸の思いだったに違いない でしょう。
せっかくこの業界に入ってこられた若い時計技術者をこのような目に二度と遭わせては ならないと思います。
〒924-0862 石川県白山市(旧松任市)安田町17-1 イソザキ時計宝石店
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