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北陸の情報誌「らくてぃぶ」から取材を受け、当店が紹介されました
(平成15年4月25日発売 春・夏号 Vol.12)
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機械式時計の修理依頼が全国から舞い込む
マイスター公認高級時計師 磯崎輝男
〜あきらめていた時計が蘇る〜
JR松任駅から商店街に向かって10分ほど歩くと、「イソザキ時計宝石店」の看板が見えてくる。一見よくある時計店だが、実は日本で数少ない「マイスター公認高級時計師(CMW)」が経営するお店だ。
マイスター公認高級時計師とは、1954年から実施された時計職人最高峰の技術試験を突破した者だけに与えられる称号で、日本人で現役のマイスターは、現在50〜60人と極めて少ない。試験の内容は、学科試験のほか、時計旋盤による天真、巻真別作、懐中時計、腕時計の修理など多岐に渡る実技試験で構成されており、磯崎輝男さん(55歳)は全国で第2位という高得点で合格した。
しかし、その直後にクォーツ時計が登場。大量生産が可能で手間がかからず、しかも精度がいいクォーツ時計は瞬く間に広がった。これによって機械式時計はしばらく陰を潜めてしまい、せっかくの資格も「宝の持ち腐れ」となりつつあった。
ところが、近年、30代から50代の男性マニアを中心に機械式時計が見直され、同時に修理依頼も増えてきたのだ。CMWなら、メーカーやサービスセンターでも修理できない時計を蘇らせてくれるのではないかという期待を込めた依頼である。
イソザキ時計宝石店でも、平成12年にホームページを開設して以来、着実に問い合わせが増え、今では北海道から沖縄まで全国から、一ヶ月に50件以上の修理依頼が寄せられるという。その修理依頼のメールや手紙のファイルが大切に保管されている。
「修理の依頼は圧倒的に機械式時計の方が多い。それは、やはり手作りの温かさと、ずっしりとした重厚感が見直されているのでは」と磯崎さんは機械式ならではの価値観を説きながら、心に残るエピソードを紹介してくれた。
それは関西の40代の男性からの依頼だった。阪神・淡路大震災で父親を亡くし、瓦礫の中から唯一見つかったのが父親の機械式時計だったという。男性は、父親の形見として持っていながら、どうしてもあの悲しい出来事を思い出してしまうため、その時計を見ないようにしてきた。しかし、ある時インターネットで磯崎さんのことを知り、「父の時計を蘇らせてほしい」との一方を届けてきたのである。
「あの時計の修理が完了した時は本当にうれしかった。もちろん、本人からも大変感謝されたが、何よりも人の役に立てたという満足感で一杯だった」と当時を振り返る磯崎さん。さらに「時計は時を刻んでこそ価値が出る。あの形見の時計が再び秒針を動かし始めたことで、彼の心の中のモヤモヤが吹き飛んだ、そんな気がしましたね」と、強面の表情を崩す。
「機械式時計の中でも修理の難しいものほど、俄然力が入ります」との言葉に、時計職人としての大いなる誇りを感ぜずにはいられない。 |