ハミルトン・ストーリー
〜その2(ハミルトンの独自技術・名機等)〜
世界初のエレクトロウォッチの開発
(左)1961年に発売された初期エレクトロニックムーブメント"505"のメカニズム
(右)ベンチュラ初代オリジナルモデル
アメリカ50年代。同調と反映の時代と呼ばれ『ミッドセンチュリーモダン』が開花した時期、そんな時期にハミルトンは世界初となる偉業を成し遂げました。それは今日まで続く、全ての電池式時計の起源となった"エレクトリックムーブメント"の開発です。
1957年に発表された"初代ベンチュラ"にはゼンマイに代わり、小さなボタン電池を内蔵した、世界初の電池式腕時計でした。電気と磁力でテンプを動かすこのムーブメントは、時計の精度を従来の機械式と比較し大幅に向上させる事に成功しました。これは時計史においての大革命をもたらした製品として50年近くスミソニアン博物館にて紹介されています。
ベンチュラはその機能だけでなく、インダストリアルデザインの鬼才"リチャードアービブ"を起用した事による、当時の保守的デザインが主流だった腕時計デザインの、常識とはかけ離れた左右非対称のデザインもセンショーショナルを起こしています。ベンチュラは一時の潮流となっただけでなく、今日まで高く評価され、ハミルトンを代表するモデルとして販売が継続し、現在もオリジナルをベースとした新型が発表されています。
アメリカが豊かさに酔いしれていた時代の名品
1930-1960年代のハミルトンの広告
アメリカで本格的に個人用腕時計が開発・販売されはじめた1920年代、ハミルトンは今日まで採用し続けている緩やかな曲線が印象的なアール・デコ調腕時計を販売開始していました。
1928年、ハミルトンが初めてアールデコデザインを採用した"パイピングロック"販売開始
↑1928年、ニューヨークヤンキースのワールドシリーズ優勝記念で
ベーブ・ルース、ルー・ゲーリックら史上最強のメンバー31人に送られた
特別仕様の"パイピングロック"です。(現在でもアメリカ野球殿堂博物館にて御覧頂けます)
1934年、マスキュリンフォルムが魅力の"アードモア"販売開始
1935年、カーブガラス採用"ボルトン"販売開始
1938年、アールデコデザインモデルの集大成"ブルック"販売開始。
これらのアメリカエレガンスのエッセンスと豊かさが薫るモデルは現在復刻され、創造性と自信に満ちていた往年のアメリカンデザインの普遍的な美しさを今日まで伝えています。
歴史にその名を刻むハミルトンの軍用時計
(上)超高精度を誇るハミルトン製マリンクロノメーター
(下)1944年製、"フロッグマン"
ハミルトンが軍用時計として使われた歴史は第一次世界大戦まで遡ります。
当時『ブラックジャック』の異名を持ったパーシング将軍の要請に応え、懐中時計を軍に納めた折り、ハミルトンの技術力が認められ、以降、アメリカ軍用腕時計として確固たる地位を築いていきました。
第二次世界大戦が迫った緊迫した折り、ハミルトンからアメリカ海軍に要請があった時計がありました。それは船舶の位置と経度を正確に計り、戦時に正確な航海を行う為不可欠な船舶用特殊時計"マリンクロノメーター"の開発依頼です。
開発依頼はハミルトン以外にも複数の時計メーカーに打診がなされましたが、海上での過酷な環境下において、ハミルトン製マリンクロノメーターの精度は群を抜いて、他社を圧倒しており、結果、アメリカ海軍にて採用されたのはハミルトン製だけだったそうです。
こうしてハミルトンの技術力は軍に高く評価され、当時としては脅威的防水を誇った潜水工作用腕時計"フロッグマン"、をはじめ、"hack"と呼ばれ陸軍兵士に愛用されたハミルトン製腕時計などを納品していく事となります。